城から現れたのは、ネロの親友のお医者様だった。
ネロ「あいつ、何やってるんだ?」
ネロと一緒に、すぐにお医者様へと駆け寄る。
ネロ「おい」
医者「っ……!? ネロ!」
ネロの姿を見た瞬間、お医者様の顔色が変わり、手にしていた荷物を落としてばらまいてしまった。
○○「大丈夫ですか?」
拾おうとした矢先、ネロが私の動きを制した。
ネロ「……待て」
その顔は、ひどく傷ついたような……悲しい顔をしていた。
ネロ「これはどういうことだ。お前が今落としたこの薬……」
医者「……」
お医者様は、苦虫を噛みつぶしたかのような表情を浮かべる。
ネロ「どういうことだ……説明しろ!」
言い訳など許さない顔をして詰め寄るネロに、お医者様は一歩後ずさった。
医者「これは僕の発明した薬だ。それを何に使おうと僕の自由だろう」
ネロ「……」
ネロは城を一瞥してから、お医者様に鋭い視線を向ける。
ネロ「……まさか、お前……」
医者「ネロ、大金が手に入るんだ……チルコの子ども達にとって喜ばしいことじゃないか」
○○「!」
医者「まだ薬は未完成だが、開発支援も検討してくれるそうだ。これでもう子ども達を使わなくて済む」
ネロ「子ども達を……?」
ネロの顔が、みるみるうちに青ざめていく。
ーーーーー
ネロ「最近、眠れないっていう奴が多くなっていて。 それに……いや」
○○「……子ども達の体はなんともないんですか?」
ネロ「医者は、巡業によるストレスのせいだろうって言ってる。 あいつが言うなら、間違いないと思うけど……」
ーーーーー
(まさか……!)
ネロ「おかしいと思ってた……このところ、体の成長が止まったような子供たちが増えてきたんだ」
○○「……っ!」
(まさか……子ども達を被検体に……!?)
ネロ「お前……っ!!」
ネロがお医者様の両肩を掴み大きく揺すった。
ネロ「お前、俺達で……あいつらで実験していたんじゃないだろうな!?」
○○「そんな……!」
医者「ひどい言われようだ。僕は君の望みを叶えてやりたかったのに。 僕は、君の望む世界を実現してやったんだ」
医者の不敵な笑みに、ネロの手が小刻みに震え出す。
医者「普通なら到底無理な、永遠に続く『子どもだらけの世界』をね」
(そんな……!)
ネロ「なんだと……」
医者「だが、やはり子どもとは嫌なものだ。尽くしてやったというのに……自分勝手な感情で喚き立てる。 悪いが僕はもう大人になる。今後はこの国で薬の開発を続けることにするよ。 金を手に入れ、豊かに暮らしていく」
彼は鼻先で笑うと、足元に散らかった薬を拾い始めた。
すると…-。
ネロ「騙したんだな……! 汚い……! 大人も、お前も……汚い!!」
医者「っ……」
ネロが、その怒りと悔しさのままに、お医者様に飛びかかった…-。