ナビット「僕です! ナビットです! みんなのおかげで、こんなかっこいい王子様になれました!」
ナビットくんはそう言って、前と変わらない丸い瞳を輝かす。
だけど、その姿はどこからどう見ても人そのもので……
○○「本当にあのナビットくんなの?」
ナビット「はい! あの時、みなさんに王子様とは何かを教えてもらったナビットです!」
○○「随分変わったんだね……」
(でもよく見れば、似てるような……)
天真爛漫に笑顔を振りまく様子も、よく動くかわいらしい瞳も、どこか面影がある。
アヴィ「こんなこともあるんだな……」
ルーク「いったいどんな力が働いたのでしょう……?」
メディ「さあ、前の姿も愛らしかったと思うけれども……。 けど、この姿も悪くないとボクは思うよ、そう、芸術センス的に!」
アヴィ「外見はともかく、王子になれたのならよかったのか……?」
ナビット「はい! 本当にありがとうございます! みんなに教えてもらって僕、ポケットランドで初めての王子様になれたんです! それにみんなのおかげで、気づいたんです! 王子様って、やっぱりかっこいい存在でなきゃいけないんだって!!」
○○「かっこいい存在……」
(確かに、そういう見方もあるけど……)
ナビット「あ……それから!!」
ナビットくんは姿勢を正して、上着の裾を掴んだ。
ナビット「僕、王子様になるってことは、ポケットランドをどんなところにするかってことを。 ちゃんと考えないといけないって思ったんです!」
○○「……!」
(ナビットくん……)
外見だけでなく、心にもしっかりと王子としての思いが刻まれている。
そのことが、まっすぐな瞳からありありと伝わってくる。
ルーク「……王子としての責任も、しっかり持てたようですね」
アヴィ「やるじゃないか、ナビット」
メディ「ボクもキミのような弟子を持てたこと、鼻が高いよ!」
ルーク「別にメディの弟子になったわけではないと思いますが」
メディ「キミは相変わらずノリが悪いね」
アヴィ「それでお前は、ポケットランドをどんな国にしたいと思ったんだ?」
ナビット「それは……まだこれからしっかり考えるつもりなんです。 僕、ポケットランドのみんなが大切だから、簡単には決められない気がして……」
○○「そうだね……じっくり考えて、ナビットくんが、もっと素敵な世界にしていくんだね」
ナビット「はい! みんなからもらったアドバイスを大事にして、立派な王子様になっていきます! だから、みなさん、本当にありがとう……あ、あれ?」
○○「!?」
言葉が最後まで告げられるやいなや、ナビットくんの足元が薄くなる。
ナビット「あ…―もう、お別れみたいです……じゃあ、またいつかお会いしましょう♪」
そう軽やかな笑顔で笑った瞬間、ナビットくんの体をまぶしい光が包み込む。
光はさらに大きく膨らむと、一瞬にして弾けてしまった。
○○「……消えちゃった」
アヴィ「……」
ナビットくんのいた花畑に柔らかなそよ風が吹く。
○○「ポケットランドに戻っていったのかな」
ルーク「不思議な子でしたね……」
メディ「だが、彼は大物になる気がするよ! このボクが言うのだから間違いないよ」
アヴィ「ああ、そうだな」
きっと、素敵な王子様になれる…―。
そんな予感を残しながら、こうして私達とナビットくんとの、不思議な出会いは幕を閉じたのだった。
忘れがたい、彼の素敵な笑顔を胸に残して…―。
おわり。