太陽最終話 溢れるほどの想い

そして迎えた、歌劇の本番当日…-。

私は、緊張した面持ちのシュティマさんと共に開演前の舞台裏にいた。

シュティマ「今日までいろいろあったけど……最高の歌劇になるように、魂を込めようと思う。 だから……〇〇、見ていてくれ」

シュティマさんが、高揚感をにじませながらそう告げる。

私はそんな彼を頼もしく思いながら、励ますように頷きを返してみせた。

〇〇「私も、今日を楽しみにしていました。客席から応援しています」

シュティマ「ありがとう。それと……」

コホンと一つ咳払いをして、シュティマさんは言葉を続ける。

シュティマ「全部終わったら、城の中庭に来てくれないか? お前に伝えたいことがあるんだ」

(それって……)

―――――

シュティマ『今、慌てて言葉を紡いでも、ちゃんと正しくお前に伝わるかどうか不安でな。 どこまでいっても情けない男だが……お前の想いは受け取った。必ず、返事をする』

―――――

薔薇園からの帰り道で言われた言葉が、頭をよぎる。

私はわずかな期待を感じながら、足早に去っていく彼を見送った…-。

……

そして舞台の幕が上がり……

観客達は、シュティマさんの妖艶な歌声に魅了されていく。

(シュティマさん、すごい……悩んでいたのが嘘みたい)

仮面の内側に情熱を秘め、ヒロインを翻弄する『仮面の男』と、ヒロインを愛し守ろうとする想いが、次第に狂い出していく『幼馴染』……

美しくも危うい恋物語はつつがなく進んでいき、万雷の拍手の中で無事に終演を迎えたのだった…-。

……

歌劇も終わり、参加者達がそれぞれの時間を楽しみ始めた頃…-。

中庭で待っていると、ほどなくしてシュティマさんがやって来た。

シュティマ「察しているとは思うが……あの時の、返事がしたくてな。 ……聞いてくれるか?」

緊張した表情の彼が、ゆっくりと姿勢を正す。

〇〇「はい……」

そう答えた瞬間……

彼のまとう雰囲気が一変した。

(シュティマさん……?)

シュティマ「『どうか、怖がらないでくれ。俺はただ……お前に想いを伝えたいだけなんだ』」

〇〇「!」

(これって、歌劇の幼馴染の台詞……?)

驚く私の方へ、シュティマさんが足を踏み出した。

反射的に後ずさってしまった瞬間、背中が塀に当たり……

私を追いつめるような動きで、彼が塀に手をつく。

シュティマ「『気づいてしまったんだ。この想いに。もう後戻りはできない』」

〇〇「……っ」

シュティマ「『お前が俺を見つめてくれている今という一瞬を、永遠のものにしてしまいたい……』」

彼の切ない声が、私の胸を締めつけてくる。

シュティマ「『お前を傷つけるすべてから、守り抜くと約束しよう。 だから、どうか……俺だけをみてほしい』」

(シュティマさん……)

シュティマさんの熱い眼差しと視線が絡み、鼓動が速くなっていく。

シュティマ「返事を、聞かせてほしい。 〇〇……」

〇〇「!」

名前を呼ばれ、私はハッと我に返る。

彼の熱情に促され、私は込み上げる想いを言葉に乗せた。

〇〇「もちろんです。私は……いつでもあなただけを見ています」

そう答えると、シュティマさんは安堵したように熱い吐息をこぼす。

シュティマ「告白された時は……驚いて、自分の想いをすぐには見つけることができなかった。 格好悪いところばかり見せてたし、励まされてばかりだったし……まさかって思って。 だから歌劇を成功させて、改めて自分から告白しようと思ったんだ」

誠実な響きをはらむ声色が、胸に熱く沁みていった。

シュティマ「もうわかってたはずなのにな。お前がいると歌がうたえる……それがどういうことか、思い知ったよ。 本当は、仮面の男の台詞で言えたら格好よかったけど……。 俺が抱く〇〇への想いは、この台詞の方が合ってるって思った。 自らの想いを伝えにいこうとする……その姿勢が、今の俺に合っているような気がしたから」

気恥ずかしそうに微笑んで、シュティマさんが塀から手を離した。

〇〇「嬉しいです……。 私の気持ちを受け止めてくれて、まっすぐに想いを伝えてくれて。 シュティマさんのことが、もっと好きになりました」

シュティマ「〇〇……」

頬が緩むのを感じながら言うと、ふわりとシュティマさんに抱きしめられる。

シュティマ「ありがとう。俺も……お前のことが大好きだ」

そう言いながら、彼が私の額に唇を落とし、嬉しそうに笑う。

私は、彼を愛おしく思う気持ちを少しでも伝えたくて……

夜風で冷えてしまったシュティマさんの背に、ゆっくりと腕を回したのだった…-。

おわり。

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