太陽SS 教え込まれた衝動

星の瞬きが聞こえてきそうなほど静かな夜空の下…-。

(なんとか助けることができて、よかったけど……)

彼女があの男に手込めにされようとしていた時のことを思い出すと、憎悪とも呼べる感情がオレの中で渦巻いていく。

〇〇「ジョシュアさん、すみません……あの……」

か細い声で、彼女がオレの名前を呼んだ。

(オレがもし気づいてなかったら、〇〇は……)

ぞくりと、背筋に悪寒が走る。

ジョシュア「なぜ、言いつけを破ったの? 言ったはずだよ。彼には近づくなと」

恐怖が怒りに変わり、それをぶつけるようにとっさに〇〇の腕を掴んだ。

そのまま彼女の腕を柱に押しつければ、いとも簡単に彼女の自由を奪うことができてしまう。

〇〇は抵抗を示すけれど、オレの力に敵うことはなく…-。

(こんなに弱いのに……)

(すぐに誰かにどうにかされそうなのに、なぜ人を疑うということをしないんだ)

ジョシュア「オレの腕を振りほどけないだろう? 本気になれば、君を傷つけるのはわけないんだよ」

逃げられないように彼女の足の間に体を割り込ませて、腕を掴む力を強めた。

(どうして……オレの言ったことを守れなかったんだ)

ジョシュア「それとも、そうなることを望んでいた? 君にも……やっぱりペナルティが必要かな?」

〇〇「っ……! 私は…-」

やり切れない思いに支配され、彼女の白い首筋をきつく吸い上げると……

オレのどす黒い心を表すかのようにくっきりとあとが浮く。

(……っ)

そのあとは、まるでオレの罪に証みたいだった。

(……違う)

怯えるように瞳を閉じる彼女を見ていると、怒りが後悔へ変わっていく。

(〇〇のせいじゃない)

(〇〇は、いつだってオレのことを考えてくれている)

(今回だって……オレのためにあの男についていったんだ)

ジョシュア「……」

(オレのせいで…―)

自責の念に苛まれ、この場から消えてしまいたくなる。

〇〇「ジョシュアさん……」

彼女が小さな声でオレの名前を呼ぶ。

(そんな顔……させたいわけじゃない)

ジョシュア「わかっているんだ。その隙を作らせたのは、オレだってことは……。 君は、オレを守ろうとしてくれたんだよね。 なのに、オレは君を責めることしかできないなんて……」

(笑えるね、厳しくマナーを教えた張本人が、こんなじゃ……)

〇〇「違う……違います。 私が、ジョシュアさんが言ったことを守らなかったから……」

オレをかばおうとする〇〇の瞳には、一点の曇りもない。

そのことが、なおオレを責め立てた。

(オレは……何に怒っているんだ)

あの男達の醜悪さなのか、〇〇が言いつけを守らなかったことなのか……

それともただ単純に、〇〇がオレ以外の男についていったことなのか。

ジョシュア「君の前で完璧でいたい自分と、君を守りたい自分と、君を独り占めしたい自分で……。 狂ってしまいそうだよ……。 今までのように振る舞うことができない」

(君のことを思えば思うほど、今までの自分がどんなだったか忘れそうになるほどに……)

(ただ、君のことを欲して、求めてしまう)

〇〇「ジョシュアさん……」

ジョシュア「すまない……君を危険な目に遭わせて、傷つけて……」

彼女から手を離すと、自分の手が震えていたことに気づく。

(無様だな、オレは……)

すると、彼女はオレの手を取ってその温かな頬に触れさせた。

〇〇「どうしたら……私はジョシュアさんを癒すことができますか? 教えてください、ジョシュアさん……」

そう言った彼女はただ、純粋で無垢で……オレが教えた通りに笑ってみせる。

(本当に、君っていう人は……)

ジョシュア「馬鹿だね……そんなお願いをするなんて。どうかしてる……。 オレは、君で狂ってしまいそうだって言っているのに」

〇〇「私は、ジョシュアさんから教えてもらいたいんです」

彼女の言葉と花のような笑みが、オレの理性を崩していく…-。

ジョシュア「〇〇……」

彼女を抱き寄せて、柔らかな唇に口づけを落とした。

ジョシュア「なら、教えてあげるよ。これから、嫌っていうほどね」

(オレがどれだけ、君のことを愛しているのか…-)

(君がどれだけ、オレのことを狂わす危険な花なのかを)

赤く色づく耳元でそう囁くと、彼女は静かに瞳を閉じた。

すべてを委ねられる感覚は、想像以上にオレの心を甘く満たして…-。

(仮面なんて、つけていられるわけがない)

彼女の体を抱きしめる度、キスをする度に衝動が抑えられなくなる。

吐息が混じり合う距離で、長く深い夜をオレ達は過ごしたのだった…-。

おわり。

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