太陽最終話 満たされゆく心

熱をはらんだ深紅の瞳が、私を射抜く…-。

〇〇「それは……」

グラッド「ちょっとだけ噛んでみたい」

彼のつぶやきに、私は思わず言葉を失った。

(会場は薄暗いから、目立たないと言っても……)

〇〇「グラッドくん、待って。ここじゃ……」

グラッド「ここじゃなければいいのか?」

すぐさまそう切り返され、ますます何も言えなくなる。

グラッド「あんたの料理を食べた時、今こうやってあんたに触れた時……」

グラッドくんは話しながら、ゆっくりと私の頬を撫でる。

〇〇「……っ」

グラッド「今まで感じたことがない感情が、心の中でもやもやしてる。俺は、このもやもやの次を知りたい」

落ち着いた声の中に、彼の激しさが垣間見えた。

グラッド「どんなものを食べても、すぐに腹が減る。 あんたにこうして触れていると空腹が気にならない……これが満たされるってことか?」

語りかけるようにつぶやいた後、私の首筋に噛みつくようなキスをした。

〇〇「!」

びくっと体を震わせると、彼がそっと唇を離す。

私を求めるまっすぐな想いが、痛いほど伝わってきた。

グラッド「〇〇……」

いつになく真剣な眼差しが、私を捉えて離さない。

グラッドくんは私の手を取って、そのまま晩餐会の会場を後にしようとした。

〇〇「グラッドくん!? どこへ…-」

慌てて問いかけると、彼は足を止め、まっすぐに私に向き直った。

グラッド「……答えが欲しい。 満たされるっていう、答えが…-」

切なげな眼差しに、心が大きく揺さぶられる。

グラッド「……駄目か?」

(駄目……じゃない。だって…-)

グラッドくんの手を握り直し、自分の中にある気持ちを確かめる。

(グラッドくんのことが、愛しい)

彼の投げかけた最後の問いかけに、私は首を横に振ったのだった…-。

……

夜気が立ち込める部屋にたどり着くと、グラッドくんがそっと仮面を外した。

グラッド「……〇〇」

いつになく低く艶のある声に、鼓動がいっそう激しく高鳴る。

何も言えずに、ただグラッドくんを見つめていると……

グラッド「あんたに見つめられると……どうにかなりそうだ。 俺も、あの仮面の男と同じ……」

それ以上の言葉をキスに変えて、グラッドくんは私に深く口づける。

グラッド「ああ……」

唇が離れ彼がこぼしたのは、幸せそうな吐息で……

グラッド「あんたが俺を……満たしてくれるんだな」

〇〇「んっ…―」

額に、頬に、耳に、鼻に、まぶたに、唇に……

ひとつひとつを味わうように、グラッドくんは私にキスを落としていった…-。

……

(……まぶしい)

窓から差し込む日差しで、私は目を覚ました。

隣で眠っているグラッドくんは、小さく寝息を立てている。

昨日の夜のことを思い出すと、頬に熱が集まってきた。

(そろそろ起きないと……)

体を起こしてベッドを出ようとすると、グラッドくんに手首を掴まれドキリとする。

グラッド「ん……」

〇〇「グラッドくん……?」

(寝ぼけてるのかな……)

あどけない寝顔に油断していると……

グラッド「足りない……もっとあんたが欲しい」

強い力で手を引かれ、ベッドに引き戻されてしまった。

〇〇「グ、グラッドくん……!」

抵抗するような声を上げると、グラッドくんがぼんやりとまぶたを開ける。

グラッド「嫌なのか?」

〇〇「! 嫌じゃ……ないんだけど」

そう返すと、彼はほっとしたように息を吐き出して……それから、私の首筋を甘く噛んだ。

〇〇「……っ!」

グラッド「いっそ、本当に食べられたらいいのに。 あんたが食べ物だったら……もう、腹が減ることもないし。 食っちまえば、ずっとあんたと一緒にいられる」

愛を注ぎ込むように、彼は何度も私の首筋を柔らかく噛んだ。

(……くすぐったい)

彼の深い欲に溺れ、私は小さく吐息を漏らす。

グラッド「……あんたが、欲しい」

〇〇「グラッドくん……」

グラッド「俺を、あんたで満たしてくれ」

私を捕らえる力が緩められ、振り返ると……

グラッドくんが、狂おしげな目で私をじっと見つめていた。

(私で……グラッドくんを満たすことができるなら)

自分に問いかけた答えは、すぐに見つけることができた。

〇〇「すべてに応えられるかわからないけど……私にできることならしたい。 それでグラッドくんが満たされるなら、私はグラッドくんの気持ちを受け止める」

グラッド「本当か?」

〇〇「うん」

力強くそう答えると、私はしっかりと彼を見つめ返した。

グラッド「あんたの気持ち、嬉しい」

ほっとしたように息を吐くと、彼は優しい笑みを浮かべた。

グラッド「俺を満たすのは……あんたしかできない」

グラッドくんが私を引き寄せ、味わうように唇にキスを落とす。

(私のすべてを、あなたに……)

グラッドくんの笑顔に確かな幸福を感じながら……

私は彼に、身も心も委ねるのだった…-。

おわり。

<<太陽7話||太陽SS>>