太陽SS 俺を満たす存在

窓の向こうで、月が青白い光を放っている…-。

晩餐会から抜け出した後、俺は〇〇を貪った。

それで、一度は確かに満たされたはずだったけど‥…

グラッド「……腹、減ったな」

また空腹感を覚えて、真夜中にも関わらず目を覚ましてしまった。

(〇〇は……よく寝てるな)

寝息で上下する〇〇の肌に、吸い寄せられるようにして唇を近づける。

グラッド「……」

(不思議だな……)

空腹を感じるのに、〇〇を見てると幸せな気持ちになった。

(満たされる……)

俺の中に芽生えた感覚を、言葉にするとそうなるのだろうか。

(触れたら、もっと…-)

柔らかい肌をくわえるように、そっと口づけてみる。

けど……

〇〇「う……ん?」

グラッド「……!」

顔をしかめた〇〇に、とっさに唇を離す。

相変わらず眠ってはいるようで、すぐに穏やかな寝顔に戻ったけれど……

(……やめておくか)

俺は胃が痛むほどの空腹感には目をつぶって、体をベッドに横たえた。

けれど、湧き上がる食欲は徐々に体を蝕んでいくようで……

(なんでだろ)

(一度満たされた後の空腹の方が、今までよりもよっぽど辛く感じる)

今すぐ、〇〇が欲しい。

そんな想いを、俺は持て余していた。

(……っていうか、これって空腹感なのかな)

グラッド「早く……朝にならないかな」

(そしたらもう一回、〇〇を……)

俺はもどかしい気持ちを抱えながら、眠りの沼に深く沈んでいったのだった…-。

……

まぶたの向こうで、〇〇がベッドから出ようとする気配を感じる。

(〇〇……?)

俺は思わず手を伸ばして、その細い手首を掴んでいた。

〇〇「グラッドくん……?」

(眠い。けど……)

〇〇の声を聞くと、唐突に欲望が湧いてきた。

グラッド「足りない……もっとあんたが欲しい」

ぐっと〇〇の手を引いて、倒れ込んだ体をしっかり抱きとめて……

(いい匂いがする)

〇〇「グ、グラッドくん……!」

焦ったような声に、俺は開きかけていたまぶたをさらに持ち上げた。

グラッド「嫌なのか?」

〇〇「! 嫌じゃ……ないんだけど」

(よかった)

(あんたに拒絶されたら……嫌だ)

(だって俺は、〇〇に触れたい。食べてしまいたい)

俺は深くため息を吐いて、〇〇の首筋に軽く歯を立てた。

〇〇「……っ!」

言葉にできない気持ちが、俺の胸を満たしていく…-。

グラッド「いっそ、本当に食べられたらいいのに。 あんたが食べ物だったら……もう、腹が減ることもないし。 食っちまえば、ずっとあんたと一緒にいられる」

(それに、そしたらあんたももう痛みを感じずに済む……)

でもそんなことはできなくて、俺は何度も〇〇の首筋を噛むしかない。

グラッド「……あんたが、欲しい」

〇〇「グラッドくん……」

グラッド「俺を、あんたで満たしてくれ」

自分の口から、はっきりとその言葉が出た。

(あんたに触れると、幸せで、甘くて、胸がいっぱいになる)

(これが……満たされる、だろ?)

俺は〇〇の言葉を待った。

すると……

〇〇「すべてに応えられるかわからないけど……私にできることならしたい。 それでグラッドくんが満たされるなら、私はグラッドくんの気持ちを受け止める」

(〇〇……)

グラッド「……」

〇〇「うん」

そう言ってしっかりと頷いた〇〇の瞳は、すごく綺麗だった。

(ああ……そっか。言葉でも満たされるんだ)

グラッド「あんたの気持ち、嬉しい」

ほっとしてため息を吐くと、自然と笑みもこぼれ落ちるのがわかった。

グラッド「俺を満たすのは……あんたしかできない」

彼女の存在を本当に大切だと感じながら、その唇に口づける。

(俺にはあんたが、必要だ)

腹は確かに減っているのに……

今俺は、満足感で胸がいっぱいになっていたのだった…-。

おわり。

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