太陽SS 兄貴への宣戦布告

〇〇とオレの想いが通じ合った翌日…-。

―――――

リド『……いいのか、オレで』

〇〇『リドが……一番好きなの』

リド『ハハッ……そんなこと言われたら、兄貴に譲るわけにはいかねえな』

―――――

(ああ言ったものの……)

(オレ達のこと知ったら……兄貴、きっと傷つくよな)

宣戦布告をしようと兄貴の部屋の前までやって来たオレは、兄貴の気持ちを思って、扉の前で二の足を踏んでいた。

(せめて、昨日のうちに言えたらよかったのに……)

彼女との想いが通じ合った後、勢いづいたオレは早速兄貴にそのことを伝えようとしたものの……

公務で忙しく走り回る兄貴を捉まえられず、タイミングを逃してしまっていた。

(……結局時間が経つにつれ、あれこれ考えちまって)

(悩んでるうちに一晩経ってたとか、我ながら心底情けねぇけど……)

余計な考えを振り払うかのように、頭を振る。

(もう、決めたんだ)

(〇〇を、オレが一番大事にするって)

そうしてオレは覚悟を決めたように拳を握り、扉をノックした。

リド「兄貴、いるか?」

カラン「リド? ああ、入れ」

部屋に入ると、兄貴は読んでいた本を閉じてオレを迎え入れてくれる。

カラン「どうした?」

リド「あ……ああ、ちょっとな」

兄貴はまっすぐにこちらを見つめていたものの、オレは後ろめたさからつい目を逸らしてしまう。

けれどもすぐに覚悟を決めて拳を握りしめ、兄貴を見つめ返した。

リド「兄貴、オレ……。 っ、オレ……!」

カラン「リド。 その様子から察するに……〇〇様のこと、だろう?」

リド「あ……」

(……やっぱ、なんでもお見通しか)

兄貴に見透かされてしまったオレは観念したように苦笑いを浮かべた後、真剣な面持ちで自分の正直な気持ちをぶつける。

リド「オレ、〇〇のことは、誰にも譲れねえ。 ……兄貴にも」

カラン「……」

場を、沈黙が支配する。

そうして少しの間を置いた後…―。

カラン「そうか」

兄貴は表情を緩め、優しい笑みを浮かべていた。

カラン「実はな、〇〇様が昨日訪ねてきたんだが。 告白は……お断りされたよ。好きな人がいるって」

リド「え……?」

(〇〇、オレより先にここへ……?)

(はは、そっか。なんかオレ、情けねえな……)

こんな時まで二番手に甘んじてしまう自分に、思わずうなだれる。

けれども…-。

カラン「こら、そんな顔するな」

兄貴はそう言いながら、笑顔でオレの肩を叩いた。

(兄貴……?)

カラン「お前が笑っていないと、〇〇様が悲しむぞ?」

リド「あ……ああ。 ……」

カラン「ん? どうした?」

リド「いや……その、さ。こうなっちまって、兄貴は、その……」

カラン「ああ……。 ……なんでだろうな、嬉しい気持ちの方が大きいんだ」

リド「え……?」

カラン「お前が素直になれる相手が、〇〇様で」

リド「……!」

どこまでも優しい兄貴に、つい涙腺が緩みそうになる。

けれどもどうにかこらえながら…-。

リド「兄貴! オレ、絶対に〇〇のこと一番大事にする。 約束、する」

カラン「ああ」

真剣な表情で誓いを立てるオレに、兄貴は力強く頷き……

オレ達は少しの間、兄弟二人で慣れない恋の話に花を咲かせたのだった…-。

……

(……兄貴には、やっぱ敵わねえな)

兄貴の部屋を出たオレは、自室へと戻るため城の廊下を歩いていた。

すると…-。

〇〇「リド」

リド「えっ? ……ああ、〇〇か。どうした?」

〇〇「うん。カランさんの部屋から出てくるのを見かけたから……。 どうしたの? 大丈夫?」

〇〇が心配そうに顔を覗き込んでくる。

リド「ああ、大丈夫だよ。だからそんな顔すんなって」

オレは笑顔でそう言いながら、彼女の頭に手を置いた。

リド「それよりもさ。せっかくこうして会えたんだし、今からまた街に行かねえか? 絶好の昼寝スポットに連れてってやるぜ。な?」

まだ少し心配そうな〇〇に、満面の笑みを向ける。

するとオレの笑顔を見て安心したのか、彼女はぱっと笑顔になって…-。

〇〇「うん!」

そう、無邪気に返事をくれた。

そんな〇〇を見つめた後、オレは兄貴の部屋の方へと振り返る。

(……もしかしたら、オレは一生兄貴に敵わないかもしれねえ)

(けど……)

(〇〇をこんな笑顔にできるのは、オレなんだ)

(他の奴に、譲ってたまるか)

そうしてオレは、〇〇の方へと向き直り……

彼女の手を取って、煌めく日差しの下へと飛び出していったのだった…-。

おわり。

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