太陽7話 伝える決心

夜が近づいても、街にはまだたくさんの恋人達の姿がある。

マーチアは足を大きく踏み出して、そんな街を一人歩き始めた。

〇〇「ま、待って……!」

声をかけると、歩く速さが少しだけ緩められ、その隙に距離を縮めたけれど……

マーチア「……」

マーチアは視線を前に向けたまま、やっぱりこちらを見ようとはしなかった。

(どうしよう、なんて声をかけたら……)

頭の中で必死に言葉を探していると、いつの間にか先ほど訪れた食器店に差し掛かっていた。

マーチア「……」

隣を歩くマーチアがふと足を止め、何かを考え込むような表情になる。

(どうしたんだろう?)

マーチアの隣に立ち、そっと横顔を覗き込むと……

マーチア「ちょっと待ってて」

マーチアはそう言って、店内に入ってしまった。

ほどなくして店から出てきたマーチアは、足取り軽く、上機嫌な様子に変わっていた。

〇〇「どうしたの?」

マーチア「んー? まだ秘密~♪」

軽い口調ではぐらかされてしまったけれど、屈託のない笑顔が再び見られて、ほっと体の力が抜ける。

マーチア「せっかく二人でいるし、もっと楽しまないとね♪」

マーチアはそう言うと、靴の踵で軽く地面を叩いた。

次の瞬間、ぽんぽんっと軽快な音を立てて道が花で埋め尽くされる。

〇〇「わぁ……!」

マーチア「驚くのはまだ早いよ?」

マーチアが今度は指をパチンと鳴らす。

途端に、周りの街路樹の枝にたくさんの小鳥達が現れ、かわいらしい声で歌い始めた。

通行人1「えっ、何これすごい! 魔法!?」

通行人2「なんだなんだ? いきなりどうした?」

マーチア「まだまだいっくよ~!」

続けて、マーチアの腕が勢いよく空に向かって挙げられる。

その動きにつられるかのように、地面に咲いた花々もふわりと浮かび上がって…-。

マーチア「これを~……こうだ!」

天高く挙げられた両腕が弧を描くように大きく横に広げられる。

すると、空からまるで雪のように色とりどりの花びらが降り注ぎ始めた。

〇〇「すごい……!」

マーチア「でしょ! ねえ、オレといると楽しい?」

目の前の光景に夢中になっていると、マーチアが鼻先を私に近づけてきた。

不意に近づいた距離に、ドキリと心臓が跳ねるけれど……

〇〇「うん、すごく楽しい……!」

そう答えると、マーチアの顔に満面の笑みが広がった。

マーチア「よーし! じゃあもっともっと、〇〇ちゃんを楽しませてあげるよ♪」

マーチアがしゃがんで、地面に落ちた花びらを一掴みすくい取る。

マーチア「行くよー? ワン、ツー、スリー、ポンッ!」

合図と同時に、花びらがあっという間に形を変え、綺麗な花冠が出来上がった。

そして、あっけに取られる私の頭に優しく花冠をのせて…-。

マーチア「あははっ、似合う似合う! すっごくかわいい」

綺麗な笑顔を向けられて、胸が甘く絞られる。

その感覚に、私は彼への想いを改めて自覚した。

(私は、やっぱりマーチアのことが大好き)

(さっきは言えなかったけど……私の想いを、ちゃんと伝えないと)

隣で嬉しそうに微笑むマーチアの顔を見ながら、私はそう決心するのだった…-。

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