太陽最終話 心に染みる温かな想い

馬車まで続く道が、街灯の光でほんのりと浮かび上がって見える。

ベンチでは愛を囁き合う恋人達が寄り添って、オリブレイトの夜の街を『愛の日』へと色づかせていた。

〇〇「ねえ、さっきどこに行ってたの?」

リド「ああ、昼間に通った店が気になったから、ちょっと覗いてきた」

(昼間に通った道……?)

〇〇「それって、どんなお店…-」

話の続きを聞こうとすると、リドが慌てたようなそぶりを見せて、私の言葉を遮った。

リド「ほら、着いたぞ」

指し示された方に顔を向けると、そこには…-。

〇〇「わあ、すごい……」

たくさんの明かりに照らされた馬車が、幻想的な雰囲気を醸し出していた。

ちりばめられた宝石が灯りを反射して、まばゆい輝きを放っている。

〇〇「すごく綺麗……」

リド「ああ……来てよかったな」

リドもその光景に、幸せそうに目を細めている。

(リド、嬉しそう。よかった)

彼の横顔を愛おしく思いながらも、私はまた馬車に視線を戻す。

〇〇「うん。夜はこんなに綺麗になるなんて、思わなかった…-」

その時、ふと手に温もりを感じた。

(え……?)

視線を落とすと…-。

私の指に、リドの長い指が絡められている。

遠慮がちに重なる手のひらの感覚に、胸が甘く絞られた。

〇〇「リド……?」

リドは真摯な瞳を私に向けて、微笑みながら口を開く。

リド「今日はありがとな」

リドからお礼を言われ、私はとっさに首を横に振る。

〇〇「……ううん。それを言うなら私の方だよ」

リド「いや……さっき、もう一回ここに来たいって、あんたから言ってくれただろ?」

リドは噛みしめるように、丁寧に言葉を紡いでいく。

リド「どんなに小さなわがままとか、お願いでもさ、あんたから言ってくれたことがすげー嬉しかったんだ」

私の手を大切そうに優しく握って、微笑むを浮かべた。

(リド……そんなふうに思ってくれてたなんて)

リド「だから、これからももっとオレに甘えてほしい。 あんたのお願いだったら、全部叶えてやりたいって思うから……」

いつもよりも深く落ち着いた声色が、心に温かく染みていく。

リドの想いを受け止めたくて、私は彼の瞳をまっすぐに見つめた。

〇〇「リド……」

リド「ん?」

私を映す瞳が優しげに揺れ、胸がいっぱいになってしまう。

(こんなにも……想われてるんだ)

〇〇「リド、私…-」

自分の想いを伝えようとした、その時だった。

リド「それと……はい、これ」

不意にリドは絡めていた手を解き、ポケットの中から光るものを取り出した。

〇〇「え……?」

リドの手のひらには、美しいヘアピンがのっていた。

〇〇「これ……」

驚いている間もなく、リドは私の髪に手を伸ばす。

〇〇「っ……」

指で優しく髪を梳かれると、リドの手のひらの温かさが伝わってきた。

リド「街で店をいろいろ見て回ってた時に、あんたに似合いそうだなって思ってさ」

リドは慣れない手つきで、ヘアピンを私の髪につけてくれた。

リド「これをつけてるあんたを、オレが見たかったっていうのもあるんだ」

そう言うリドの頬は、ほんの少しだけ赤くて…-。

〇〇「リド……」

リド「あ! もちろん、あんたが喜ぶことを、一番に考えたからな」

慌てた様子でそう言った後、リドは私から少しだけ離れて……そして、満足そうに微笑んだ。

リド「ほら、やっぱり似合ってる。 すげーかわいい」

手をやると、小さな花の飾りがちりばめられているヘアピンが指に触れた。

〇〇「リド……ありがとう。 本当に…-」

驚きと喜びで喉が詰まり、想いが上手く言葉にならない。

リドはそんな私を見て、少し困ったように目を細めた。

リド「さっき、あんたのわがままを聞いてやりたいって言ったけど」

彼の手が、もう一度私の髪をあやすように撫でる。

リド「オレがわがままを言うとしたら……あんたに笑ってほしいってところかな?」

〇〇「うん……」

私の髪に触れるリドの手に自分の手を重ね、彼に心からの笑顔を向けた。

〇〇「すごく嬉しい。ありがとう、リド!」

リド「どーいたしまして、お姫様」

リドがいつものように明るく笑う。

けれどその声色には、今までよりもどこか甘やかな響きがあって……

リド「じゃ、行くか」

〇〇「うん!」

そのまま私達は、お互いの手をぎゅっと握る。

〇〇「リド……大好きだよ」

リド「……オレも!」

愛の日の余韻に酔いしれながら……

今日が過ぎても紡がれていく彼との甘い時間に、私は思いを馳せたのだった…-。

おわり。

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