太陽最終話 二人だけのお茶会

フォーマ「ごめん、少し気になることがあって…―」

そう言ったきり黙り込んでしまったフォーマと私の間に、静寂が訪れる。

○○「ねえ、フォーマ。気になることって……?」

勇気を出して切り出すと、やがて彼は重い口を開いた。

フォーマ「……やっぱり君は、僕と一緒じゃ楽しめないんじゃないかって」

○○「え……?」

思いもよらない言葉に、目を見開く。

○○「そんなことないよ。どうしてそう思ったの?」

フォーマ「君から負の感情は伝わってこない。だが……。 昨日の帰りから君の様子は変だった」

○○「昨日の帰り……?」

フォーマ「ああ。急にぼんやりしたり、今日だってぎりぎりにやってきた」

(それは……)

私は傍に置いていた薄桃色の風呂敷に視線を落とした。

フォーマ「君は優しいから付き合ってくれているけど、もしかしたらと思って……」

(……私が勘違いさせちゃったんだ)

○○「ごめんなさい。そうじゃないの。 実は、フォーマにこれを食べてほしくて」

私は風呂敷の結び目を解き、白い箱を開けて見せた。

フォーマ「これは……?」

○○「最中だよ。中に餡が入ったお菓子。お茶の時に食べようと思って、さっき買ってきたの。 フォーマ、あんぱんを気に入ってたみたいだから、これも好きかなって思って」

フォーマ「僕のために、これを……?」

箱の中には、丸い小さな鈴の形をした最中が並んでいる。

○○「うん。昨日の帰りに思いついて……不安にさせてごめんね」

フォーマ「そうだったのか……。 僕は恥ずかしい勘違いをしていたわけだ」

ふっと表情が和らぐ彼の頬は、少し赤くなっている。

○○「ごめんね。私が驚かせようとしたばっかりに……」

フォーマ「いいんだ。と言うより……とても嬉しい。 早速いただいてもいいかな?」

○○「うん」

フォーマ「本当はお菓子をいただいてからお茶だけど、今日はそういった作法は抜きにしよう」

彼は最中を藤色のお皿に乗せると、お茶を点て直す。

……

やがて、私達の前にお茶と最中が並べられた。

フォーマ「それじゃあ……いただきます」

彼はそっと最中を手に取り、そのまま口に運ぶ。

フォーマ「おいしい……! パリッとした皮となめらかな餡が合っているな」

○○「うん。どれもおいしい最中で迷ったんだけど、これが一番だったの」

フォーマ「そうか。僕達は味覚も合うんだな」

明るい笑みを浮かべる彼の口元に、少しだけ餡がついている。

○○「フォーマ、口のところについてるよ」

フォーマ「え……! 恥ずかしいな」

彼は口元を拭うけれど、餡はなかなか取れず……

苦戦している様子の彼を少し微笑ましく思いながら、私はハンカチを取り出した。

○○「ここだよ」

フォーマ「……!」

口元にそっとハンカチをあてると、フォーマが目を見開く。

フォーマ「僕は子どもじゃないんだから……。 でも……ありがとう」

視線を泳がせるフォーマの頬は、ほんのりと色づいていた。

そして……

フォーマ「……今日は恥ずかしいところばかり見せてるな。不安になったり、こうして粗相をするなんて……。 ……君に嫌われないといいんだが」

初めて見る彼の意外な一面や、ぼそりとつぶやかれた言葉が、私の胸をくすぐる。

○○「そんなことないよ。いつもの落ち着いてて格好いいフォーマも好きだけど……。 こういうかわいいフォーマも、私は好きだよ」

自然と口から素直な言葉が溢れ出す。

フォーマ「……」

フォーマの顔は、先ほどよりも一層、上気しているように見えて……

(私、何を……)

自分が言った言葉の意味に気づいたその時、私の頬も熱くなってしまった。

けれど、次の瞬間……

フォーマ「僕も……君が好きだ」

○○「……!」

フォーマの静かだけれど力強い声が、茶室に響く。

フォーマ「僕を気遣ってくれる優しさも、素直なその心も……隣にいる時の心地よさも。 今この瞬間が……すごく幸せで、愛しく思う」

柔らかな声で紡がれる言葉が、私の心を優しく包み込んでいく。

○○「フォーマ……」

微笑み合った後、彼は柔らかな色使いが印象的な茶碗を私の前へ差し出した。

フォーマ「今日の茶碗は○○をイメージして選んだんだ。 今日は、二人だけで気ままにお茶を楽しもう」

○○「うん。フォーマ、ありがとう」

彼の心遣いを嬉しく思いながら、私はお茶を口へと運ぶ。

穏やかに流れる時に身を任せ、私達は二人きりのお茶会を楽しむのだった…―。

おわり。

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