太陽SS 君との優しい時間

茶室から眺める庭園は、時の流れを忘れさせるほど優美で、静寂に満ちている…―。

(○○……)

彼女と二人きりでお茶会をする約束をしていた僕は、時間よりも少し早く茶室を訪れて、雨に濡れる花々を眺めながら、昨日のことを思い返していた。

(あの時、君から負の感情は伝わってこなかった)

(だが……)

二人で森を歩く最中、彼女は心ここにあらずといった状態で、そのことを思い返すと、もやもやとした気持ちに支配される。

フォーマ「……君が何を思っているのか、わからない」

(二人の時間が楽しいと思っているのは……)

(好きだと思っているのは、僕だけなんだろうか?)

恋に胸を焦がす僕は、唇を噛みしめてうつむく。

だけど……

フォーマ「……」

(……思い込みはよくないな)

(まだ、そうと決まったわけじゃない)

優しい雨音が少しずつ心を落ち着かせてくれて、うつむいていた僕は静かに顔を上げた。

(とにかく今は、お茶会のことだけを考えよう)

(こんな乱れた心のままじゃ、いいお茶は点てられないだろうし……)

雨の匂いがする空気を深く吸い、心をさらに落ち着ける。

(○○には、おいしいお茶を飲んでもらいたい)

ようやく平静を取り戻した僕は、ちらりと部屋の隅にある時計を見た。

フォーマ「……ああ。もう、こんな時間なのか」

○○との約束の時間は、すぐそこまで迫っている。

だが、いつもなら時間よりも早く来ていることの多い彼女の姿は、まだなかった。

(何かあったんだろうか? それとも……)

(このお茶会も、本当は迷惑だった?)

自らの負の感情に飲み込まれそうになったその時、廊下から足音が聞こえてくる。

……

そうして、二人きりのお茶会が始まり……

(まさか、僕のためにこれを選んでくれていたなんて)

すべては自分の思い過ごしだとわかった後、僕は彼女が買ってきてくれた、おいしい最中を口にしていた。

すると……

○○「フォーマ、口のところについてるよ」

フォーマ「え……! 恥ずかしいな」

(しまった。少し浮かれすぎだな……)

僕は、慌てて口元をぬぐう。

だけど慌てているせいか、上手く取れなかったようで……

○○「ここだよ」

フォーマ「……!」

甘い香りのするハンカチが口元にあてられ、鼓動がどきりと跳ねる。

(君に、こんなことまでさせてしまうなんて……)

フォーマ「僕は子どもじゃないんだから……。 でも……ありがとう」

(……熱い)

頬の熱を自覚した僕は、思わず視線を彷徨わせる。

そして……

フォーマ「……今日は恥ずかしいところばかり見せてるな。不安になったり、こうして粗相をするなんて……。 ……君に嫌われないといいんだが」

○○「そんなことないよ。いつもの落ち着いてて格好いいフォーマも好きだけど……。 こういうかわいいフォーマも、私は好きだよ」

(え……?)

(僕が……好き?)

フォーマ「……」

自分の言葉の意味に気づいたのか、彼女の頬が赤く染まる。

それを見た僕は……

フォーマ「僕も……君が好きだ」

ありのままの想いを伝えると、彼女が驚いたように目を見開いた。

フォーマ「僕を気遣ってくれる優しさも、素直なその心も……隣にいる時の心地よさも。 今この瞬間が……すごく幸せで、愛おしく思う」

○○「フォーマ……」

○○と微笑み合った後、僕は先ほど点てたお茶を彼女に差し出す。

フォーマ「今日の茶碗は○○をイメージして選んだんだ。 今日は、二人だけで気ままにお茶を楽しもう」

(もう一度初めから、君との優しい時間を……)

○○「うん。フォーマ、ありがとう」

○○はゆっくりと茶碗を口へ運び、僕の点てたお茶を飲む。

その姿はとても綺麗で、思わず見とれそうになり……

(……駄目だな。せっかくのお茶会だっていうのに)

外の世界から切り離されたような静けさの中で、僕は密かに胸を高鳴らせていたのだった…―。

おわり。

<<太陽最終話||月覚醒へ>>



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