太陽SS キミだけが特別

随分深い時間まで調べものに没頭していたようで、窓の外はいつの間にか真っ暗になっていた。

静寂に包まれた図書館の片隅で、〇〇ちゃんに痣をつけたと思われる原因を見据える。

(この古書の目的は……それに、どうして〇〇ちゃんなんだ……)

(オレが傍についていたのに……)

得体の知れない何かが彼女へ危害を及ぼすのでは……そう思うと、強い苛立ちが抑えられなかった。

(いつもは体を動かしてばかりだから、書物をこんなに読み漁ったのなんて初めてかもしれない……)

調べてわかったのは、この黒い古書はこよみの国の物の怪が記したもので…-。

そして〇〇ちゃんにつけられた痣は、獲物の印だということだ。

(物の怪の本体はもういないみたいだけど……安心はできない)

彼女の白い肌に浮かんだ紅い痣が脳裏に浮かぶ。

(〇〇ちゃん……待ってて)

女の子を守るのは当然だけど……彼女のことになると、絶対にオレの手でどうにかしないとって思う。

(ああ、そうか……こんな時になって気づくなんて……)

(〇〇ちゃんのことが好きだから、オレはこんなに必死になってるんだ)

焦る理由に思い当たり、俄然やる気に火が点く。

彼女を古書の執着から引きはがすすべを求め、オレは次の調べ物へと取りかかった。

……

古書に宿った物の怪の想いを開放することに成功し、〇〇ちゃんにつけられていた痣も綺麗に消えたけど…―。

(怖がらせないようにって、ほとんど説明しなかったから……余計怖い目に遭わせちゃったかも)

(オレの手で守りたいからって一人で張り切ったのは、反省しないとだなぁ……)

そんなことを考えていると……不意に、〇〇ちゃんに袖を掴まれる。

イナミ「〇〇ちゃん?」

〇〇「イナミくん、あのね……」

オレに向けられた彼女の表情は、強い意志を持っていて……

そんな〇〇ちゃんの気持ちを受け止めたくて、彼女の綺麗な瞳をじっと見つめた。

〇〇「私……。 イナミくんのことが好き」

(〇〇ちゃんも……?)

(それ、すっごく嬉しい……!)

彼女から告げられた言葉へ返すよりも先に、体が動いてしまっていて……

オレは顔を真っ赤にしている〇〇ちゃんの腰を抱き寄せ、口づける。

〇〇「!」

イナミ「オレも……キミが好きだよ」

〇〇ちゃんの頬に手を添えると、彼女の瞳がオレを映して揺れていた。

イナミ「物の怪がキミに痣を残したって知って……怒りが湧いた。 他の誰にも、キミにこうやって触れてほしくない」。キミに触れるのは……。 オレだけがいいって、そう強く思ったんだ」

(この指先に触れる肌の感触も、温もりも、オレが守りたい)

(キミだけが特別だから)

イナミ「……キミは?」

彼女の気持ちを知りたくて、深く深く瞳を覗き込む。

(キミは、オレを特別だって思ってくれているのかな)

(知りたい……キミにとってのオレを)

イナミ「キミは、どれくらいオレのことが好き?」

〇〇「私は……」

言葉の代わりに、〇〇ちゃんの唇がそっと重ねられる。

わずかな温もりを届けて離れると、彼女は恥ずかしそうに頬を赤らめた。

〇〇「……言葉じゃ、伝えきれないよ」

(……!)

イナミ「ははっ、それもそうだね」

(オレも、キミがどう特別なのかきっと上手く言葉で説明できないや)

(だからオレも同じくらい。きっとキミと同じくらい好きなんだ)

イナミ「うん、わかった。じゃあ……こうしようか」

〇〇「え……?」

痣が消えた首筋に手を添えて、オレは彼女との距離を詰める。

イナミ「オレの気持ちを、これからいっぱいキミに伝えるから……」

(時間をかけて……今までの気持ちを全部伝えるよ)

イナミ「キミもオレに、いっぱい気持ちを教えて?」

(オレ達は、伝え合うことができるから)

イナミ「駄目?」

〇〇ちゃんは首を横に振ると、ゆっくりと目を閉じた。

(……ありがとう)

(キミの好きが、一つ伝わったよ)

彼女を抱きしめ、そっと口づける。

オレとだけの特別な繫がりを残せるように、想いを込めて…-。

おわり。

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