丘の向こうに沈んでいく太陽が、まばゆい光を放っている。
イリアさんの手の中で、懐中時計が音を立てて閉じられた。
イリア「……丘に行きましょう」
〇〇「でも、王妃様との約束は?」
王妃様、という言葉にイリアさんの肩が微かに揺れる。
イリア「いえ……」
迷いを振り切るように、彼の瞳が一度伏せられる。
やがて顔を上げると、彼はまっすぐに私を見つめた。
イリア「今は貴方ともう少し一緒にいたい」
〇〇「イリアさん……」
イリア「行きましょう、〇〇様」
〇〇「でも……」
イリア「早くしないと、夕日が沈んでしまいます」
(本当に大丈夫なのかな)
心配で、胸のざわめきがおさまらない。
(でも……私も、イリアさんと一緒にいたい)
大きな決心をしたように歩き出した彼の背中を見つめ、私も一歩、足を踏み出した。