収穫祭のためのお菓子作りを終えた、その後…―。
ぼくと○○は、部屋に戻ってきていた。
(……すごく疲れた)
ソファに身を沈め、疲れた体を休ませる。
(お菓子一つ作ることが、こんなに大変だなんて)
○○「すごく上手にできましたね」
ずっとぼくにお菓子作りを教えてくれていた彼女は、少しの疲れも見せずに笑っている。
ペルラ「……それは……きみがいたから」
○○「でも、頑張ったのはペルラさんですよ」
(……ぼくが、頑張ったから……?)
頬が熱くなっていることを自覚し、持っていたクッションで顔を隠す。
でも……
ペルラ「こっち」
○○の近くにいたくて、ぼくは彼女を隣へと促した。
○○「ペルラさん……はい、ありがとうございます」
○○は、ちょっとだけ頬を染めながら、ぼくの隣に座った。
(甘い匂い……これは、さっきのお菓子の……)
その香りに、力が抜けていって……
○○「……!」
ぼくは自分の頭を、彼女の膝の上に乗せた。
(柔らかくて……あったかい……)
(なんだかすごく……幸せだな)
○○「あ、あの、ペルラさん……?」
ペルラ「なんだか一生分、頑張った感じ。 だから、ちょっとだけ休ませて?」
(気持ちいいから……)
心地よい疲労感と幸福感がぼくを包み、やがてまどろみへと変わっていく……
ペルラ「でも……こんなふうに頑張るのも、悪くないね。 そうじゃなきゃ、皆の大変さとか、ちゃんとわからなかったと思うし……。 これからは、もうちょっとしっかりやらなきゃって思ったよ。 公務も、それから……恋も」
○○「恋……?」
(あ……)
思わずこぼれた言葉に、ぼくはわずかに動揺した。
でも……ぼくはもう眠たくて、幸せな気持ちが溢れ出して止まらなくて……
ペルラ「うん、きみとの恋。 やっぱり、きみもちゃんとした王子様の方が好きでしょ? だってきみ、ちゃんとやろうとしたぼくのこと、嬉しそうに見ててくれた……。 楽しそうに……幸せそうに……」
(それが、とても嬉しくて……)
(ぼくも、幸せなんだ…―)
○○に髪を撫でられるのが気持ちよくて、もう少しだけ起きていたかったけれど……
次第に、意識が遠のいていった…―。
…
……
ペルラ「ん……」
(あったかい……)
どれくらい眠っていたんだろう。
ゆっくりと目を開けると、まだぼくは○○の膝の上だった。
○○「あ……起こしてしまいましたか?」
ペルラ「ん……ううん……。 ずっと、膝枕してくれてたの?」
○○「っ……はい。気持ちよさそうに眠っていたので……」
恥ずかしそうに答える○○を見ると、きゅっと胸が苦しくなる。
(なんでかな?)
横になったまま彼女を見上げ、その頬にそっと手を伸ばす。
柔らかな感触が、またぼくの胸を苦しくさせた。
ペルラ「ありがとう。○○……」
○○「いえ……」
ペルラ「疲れてたの、取れたみたい」
彼女が幸せそうにふわりと笑う。
(なんでだろう……)
体を動かすことが面倒だと思うのに、ぼくはゆっくりと起き上がって……
○○「っ……」
○○にキスをした。
○○「ぺ、ペルラさん……?」
ペルラ「ありがとうの、キスだよ」
○○「っ……」
そっと彼女の体を抱き寄せる。
ぴったりぼくにくっついて、抱きしめるだけで気持ちいい。
ペルラ「きみは、疲れてない?」
○○「少しだけ……」
ペルラ「だよね。じゃ、一緒に寝よう?」
○○「えっ……?」
ぼくの腕の中で、○○が身じろぐ。
(離したくない……)
ペルラ「ぼく、きみとくっついて眠るの、好きみたい」
○○「でも……」
ペルラ「だって疲れたんでしょ?」
○○「あ……」
そっとソファから立ち上がって、彼女の手を引く。
ペルラ「きっと、いい夢見られるんじゃないかな」
○○「……」
わずかな戸惑いを浮かべた後、彼女はぼくに従い立ち上がった。
ペルラ「同じ夢を見たいな。○○と……」
そんなことを言いながら、二人でベットにもぐり込む。
(ああ、まだまだやらなきゃいけないこと、きっとたくさんあるのに)
(ぼく……駄目だな)
彼女と身を寄せあう幸せが、ぼくをまたまどろみへと誘う。
(これからいっぱい頑張るから……今は……)
(今だけは…―)
やがて、○○の静かな寝息が聞こえてきた。
(やっぱり、疲れてたんだよね)
その小さな額に、ぼくはそっとキスを落とし……静かに瞳を閉じたのだった…―。
おわり。