太陽最終話 オマエ、未来の嫁!

ランダさんの寂しげな背中が、気になって……

(確か、こっちに行ったと思うんだけど……)

村を離れ森の奥へ進んでいくと、そうそうと流れる水の音が聞こえてくる。

(あっ……)

少し離れた水辺で、ランダさんが一人たたずんでいた…-。

〇〇「ランダさん……どうしてここに?」

ランダ「ここ、ヒンターランドの神聖な川。 儀式の前、ここで清める」

ランダさんは、ぐるりと周囲を見渡す。

(ここで……)

川の水は透き通り、木々にはたわわに果実が実っている。

耳を澄ますと、小鳥のさえずりも聞こえる。

(神聖な雰囲気……)

ランダ「オレ、ヒンターランド、好きだ。 何より、守りたい、汚すつもり、ない……」

ぽつりぽつりとつぶやかれた言葉から、彼の純粋な思いが伝わってくる。

(ランダさん……)

隣に座り、力ない彼の手にそっと触れる。

(こんなにも、ヒンターランドのことを真剣に……)

強く純粋な彼の思いに打たれ、胸が熱くなる…―。

〇〇「……私に、見せてくれませんか? まだちゃんと、ヒンターランドの儀式を見たことがなかったので」

ランダ「……見たい?」

〇〇「はい、是非! ヒンターランドの文化にも触れてみたいです。 きっと、素敵なんだろうなって……」

彼の大きな手が、私の両手を包み込む。

ランダ「わかった、オレ、いい儀式にする!!」

彼の手には、力強さが戻っていた…-。

儀式当日…-。

用意していただいた席で、私は儀式を見守る。

(隣の席には、お父様……)

ちらりと様子を伺うけれど、その表情からは、何を考えているか読み取ることができない。

くつもの松明が、周囲を明るく照らし出す。

緊張感漂う中、儀式が始まった…-。

ランダ「神の使いハ―ヴ! よく来てくれた!」

ランダさんの深い声が、辺りに響き渡る。

ランダ「豊かな恵み、感謝する! オレ達からの礼、受け取ってくれ!」

天を仰ぐように大きく手を広げると、ランダさんは勇ましく踊り出す。

それを合図にするかのように、村の人達も力強く踊り始めた。

縦横無尽に動き回る彼らから、確かな熱が伝わってくる。

(すごい……ひとりひとりが、まるで炎みたい)

生命力溢れる踊りに目を奪われ、私は言葉を失った。

族長「……わかってる」

ランダさんのお父様が、ぽつりとつぶやく。

〇〇「……え?」

族長「ランダの言うこと、正しい。オレ、わかってる。 でも、アイツまだ半人前。もっと成長の必要、ある」

ランダさんのお父様は、儀式をまっすぐに見つめている。

それは、とても優しい眼差しで…-。

〇〇「……ランダさんは、ヒンターランドを何より大切に思っています。 今回の外遊も、ヒンターランドのためにって……」

族長「……」

ランダさんのお父様は、ちらりと私に視線を移した。

強い眼力で見つめられ、思わず身を固くする。

族長「オマエ、ランダの…―」

お父様が何かを言いかけた時……

ランダ「親父! 見てたか! 親父の時より、盛り上がった!」

儀式を終えたランダさんが、自信満々な表情で駆け寄ってくる。

族長「そうでも、ない」

ランダさんのお父様は、眉をしかめ厳しい言葉を吐く。

ランダ「親父! オレ、ヒンターランドが好きだ! 悪くなんて、しない! だから、オレを信じて欲しい」

(ランダさん……)

族長「……わかってる」

不意に、ランダさんのお父様は私に視線を移す。

族長「まずは嫁、幸せにしろ。それができないと、一人前の男じゃない」

(えっ、嫁って……!?)

ランダさんは、どんと力強く自分の胸を叩く。

ランダ「わかった! 親父!」

〇〇「……!」

戸惑う私の横で、和解した二人は笑い合い……

(えーっと……)

ランダさんのお父様は、満足げな表情で立ち去っていった。

〇〇「あの……嫁って」

 

突然、逞しい腕に肩を抱き寄せられる。

(あっ……)

ランダ「嫁、オマエ! まだ、嫁ちがう。これからなる。嫌か?」

〇〇「……っ」

耳元でそっと囁かれ、胸の高鳴りを抑えきれない…-。

ランダ「オレ、オマエ、大事……愛しい!」

まっすぐな言葉が胸に沁み、幸せな気持ちでいっぱいになる。

(私も…ランダさんのことが……)

その言葉を紡ぎだそうとした時……

星がきらきらと瞬く夜空に、大輪の花火が打ち上った。

〇〇「花火……綺麗」

ランダ「ヒンターランドの自慢。作るの難しい」

〇〇「……私の世界でも、新しい年を迎える時は、こうして花火でお祝いすることがあるんですよ」

ランダさんは何かを思いついたように、ぱっと目を見開く。

ランダ「オマエの世界、新しい年に目標立てる……オレ、目標、立てた!」

〇〇「目標を?」

ランダ「オレ、もっと強くなる。もっと知識、つける。 ヒンターランドもオマエも、全部、幸せにする」

抱き寄せられた腕に、さらに力が込められる。

(ランダさん……)

(そんなことを思ってくれているなんて……嬉しい)

力強い彼の腕の中で、私は彼をまっすぐに見つめる。

〇〇「……はい!」

ランダさんは満足げに笑うと、私の手を引いて歩き出した。

ランダ「ご馳走、作る! 幸せ、祈って食べる! これからもよろしく、〇〇!」

〇〇「……はい! よろしくお願いします、ランダさん」

広い夜空に、幾筋もの流れ星が弧を描く。

繋がれた手のひらから伝わる彼の熱を、私はしっかり受け止めた…-。

おわり。

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