太陽7話 感謝の小舟

ダグラスさんに連れられて入った部屋の光景に、私は思わず息を呑む。

そこには、まばゆいほどに輝く金銀財宝が置かれていた。

〇〇「すごい……」

ダグラス「さっき言ってた小舟っていうのはこれ」

ダグラスさんが棚から下ろしたのは、両手で抱えられるほどの木船だった。

ダグラス「アンキュラの風習でね。新年初めての日の出とともに、航海を始めるんだ。 って言っても、この小さな船の航海だけど」

ダグラスさんが説明をしてくれている間に、ボニータが小舟に宝石をせっせと積んでいく。

(ボニータの船……じゃないよね?)

その姿に視線を奪われていると…-。

ダグラス「ははっ、ボニータの船ではないよ」

〇〇「……っ」

ダグラス「どうして考えていることがわかったの? って思った?」

〇〇「あ、はい……」

ダグラス「君は思ったことが顔に出やすいからね。本当にかわいいよ。 こんなに楽しい年越しの準備は初めてだな。君がいてくれて、よかった」

ダグラスさんの嬉しそうな笑顔に、胸がきゅんと甘く打ち鳴る。

ダグラス「〇〇も、手伝ってくれるかい?」

〇〇「はい」

ダグラス「新年もたくさんのお宝が見つけられますように……そんな願いを込めて小舟をいっぱいにするんだ」

(え……この船いっぱいに?)

小舟とはいえその大きさはなかなかなもので……

〇〇「そんなにたくさん乗せちゃうんですか?」

ダグラス「いつも海からもらってばっかじゃ悪いだろ?」

ダグラスさんがにっこりと微笑んだ。

(もらってばっかじゃ悪い……か)

その言葉を聞いて、昼間の話を思い出す。

ーーーーー

ダグラス「新年は新しい気分で迎えたいからね。一年の最後の日は、船をピカピカに磨き上げるんだ。 この一年の感謝も込めて」

ーーーーー

船に、海に……一年の感謝を返すというダグラスさんを、私はまぶしいという思いで見つめた。

(ダグラスさんが皆に慕われる理由がよくわかるな)

そんなことを考えながら、深い海の色をした宝石を手に取り、そっと小舟の上に乗せてみる。

〇〇「この小舟は、浮かべるだけでちゃんと沖へ向かうんでしょうか?」

ダグラス「まさか。動くようにするんだよ」

〇〇「……?」

その様子を想像できない私に、ダグラスさんが悪戯っぽい笑みを見せる。

ダグラス「どうやって動かすのかは、まだ秘密」

早朝の海を進んでいく小舟を、思い描く…-。

(どうやって動くんだろう? 楽しみだな)

そうして宝石を乗せ、飾りつけを終えたところで、微かに鐘の音が聞こえた。

〇〇「この鐘は……」

ーーーーー

ダグラス「『潮見の鐘』って言ってね。海の平和を見守るように、海辺に立っている塔の鐘の音だよ。 ただ、一年の最後の日……つまり、今日は一晩中鳴るんだ」

ーーーーー

〇〇「始まりましたね」

ダグラス「ああ……今年ももう終わりそうだね」

微かに聞こえる鐘の音もまた美しく……

一年の終わりを知らせるその音に、私達は微かに耳を傾けていた…-。

<<太陽6話||太陽最終話>>