銃口がグウィードさんに向けられ……
そのただ中で、彼は悠然と剣を構えた。
グウィード「さあ、始めようか」
銃声がいっせいに鳴り響いた。
(グウィードさん……!)
銃弾から逃れひらりと飛び上がると、彼はシャンデリアにぶら下がった。
そのまま二階席の壁を伝い、走っていく。
追手「くそっ! 撃ち落とせ!」
その声よりも一足先に、グウィードさんは彼らの後ろに降り立った。
追手「なっ……!?」
グウィード「形勢は逆転したようだ◆」
彼の剣が、追手の間で煌めいた。
(すごい……まるでダンスをしているみたい)
次々に倒れていく追手の中で、彼は華麗に舞っていた。
そして、うずくまる追手の一人に剣先を向ける。
グウィード「誰の差し金かは分かっている。伝えろ、僕はもう逃げない。 だがその代わり、容赦もしない」
追手「くっ……!」
追手が、煙をまくように退散していく。
〇〇「グウィードさん……!」
私が駆け寄ると、彼はいつものように優しい微笑みを浮かべた。
けれど、彼の仮面にはヒビが入り、体のあちこちにかすり傷ができている。
グウィード「それ、まだ持っていたの?」
私が抱きしめている花冠を見て、彼が笑う。
グウィード「そんなに心配しなくてもいいよ。慣れた事だから」
そう言って、彼はヒビの入った仮面に手をやる。
グウィード「僕には義理の母と弟がいてね。僕のことを消したくてたまらないらしい。 今まで僕一人の問題だったから、適当にあしらっていたけれど……」
そこまで言うと、彼は仮面をゆっくりと外して……
私を抱き寄せて、頬を摺り寄せる。
グウィード「君と出会って、そうは言っていられなくなってしまった。 僕は戦わなければならない。 君とのこれからを守るために……」
〇〇「グウィードさん……」
グウィード「君が僕のそばにいてくれるのなら、だけど◆」
〇〇「はい…います…ずっとそばに」
グウィード「子猫ちゃん……」
ふっと微笑んだかと思うと、何かを決心したかのように、彼はまた静かにその顔を仮面で覆った。
そして…-。
私をさらに強く引き寄せる。
グウィード「ん?」
私が抱きしめたままの花冠に、視線を落とした。
グウィード「ボロボロになってしまったね」
そっと花冠を手にとると、私の頭に上にのせた。
グウィード「さっきの続きを覚えているかい? ミモザの別の花言葉のこと」
〇〇「はい……」
グウィード「花言葉は『真実の愛』」
〇〇「グウィードさん……」
寄せられる唇に、瞳を閉じる。
(え……?)
すると、鼻に柔らかな感触を感じて、目を開いた。
グウィード「キスされると思った?」
そう言って、彼が私の頬にキスをする。
〇〇「っ……」
思わず彼の腕をつかむと……
グウィード「くっ……」
傷に触れてしまったのか、グウィードさんが顔を歪めた。
〇〇「すっ、すみません……」
グウィード「いや……いいよ。その代わり、子猫ちゃんのキスで僕の傷を癒して◆」
〇〇「私の、キスって……」
グウィード「さあ……」
彼が悪戯っぽく、自分の唇をトントンと指さす。
〇〇「……」
頬を染めながら、ゆっくりとグウィードさんの唇に、私の唇を寄せる。
柔らかい感触を感じたかと思うと、私の体が彼の腕に抱きすくめられた。
グウィード「いい子だね……」
今度は、彼に深く口づけられる。
〇〇「ん……」
そのまま、ゆっくりと彼の重みがかかり、ホールの床に背が触れた。
グウィード「いいかい……?」
小さく頷くと、この上無く優しいキスが首筋に落とされた。
肌に触れる彼の髪からは、フワリとミモザの香りがした…-。
おわり。