太陽8話 襲い掛かる不安

森が焼き討ちにあっているとの報告を受け、ゲイリーさんが向かってからしばらくして……

木々の間から、険しい顔をしたゲイリーさんが戻ってきた。

○○「ゲイリーさん!」

すぐさま駆け寄ると、火事のせいか灰をかぶり服はところどころ焼け焦げていた。

ゲイリー「待たせてしまったな」

○○「大丈夫ですか? ゲイリーさん、怪我は?」

ゲイリー「ああ、大丈夫だ。それよりも……焼き討ちの経緯がわかった」

○○「経緯……?」

ゲイリーさんが、忌々しげな顔をして口をゆっくりと開く。

ゲイリー「継母だ。俺の居場所を突き止めて、この森を焼いた」

(継母……ゲイリーさんに呪いをかけた人)

ゲイリー「そのせいで、俺の大事な仲間も一人、命を落として……!!」

○○「そんな……!!」

ゲイリー「だが、継母の居場所も逆にわかった。体勢を立て直し、明日にはそこへ乗り込む」

ゲイリーさんが、きつく拳を握りしめる。

○○「……私も一緒に行きます」

ゲイリー「……危ない目に遭うことになるぞ」

○○「それでも……ここに残って、ゲイリーさんの無事を祈っているだけじゃ嫌なんです」

まっすぐに見つめ合う。

ゲイリーさんの強く鋭い眼差しは、出会った頃と変わりないけれど、今は……

(この人のことを守りたいって思う)

(ゲイリーさんが私を守るって言ってくれたのと同じように)

ゲイリー「……わかった」

ゲイリーさんは、深く頷くと、今夜は早く休むようにと言った。

そして、その日の夜……

ゲイリー「まだ、起きてるか?」

少し離れた場所に横になっていたゲイリーさんが、小さく声をかけた。

○○「はい……なかなか眠れなくて」

返事をすると、少しの間の後、ゲイリーさんが再度話し始める。

ゲイリー「俺が、継母を前にすれば、この呪いはどうなると思う」

○○「え……?」

ゲイリー「この呪いは、憎しみを何倍にも膨らませ、全ての負の感情で満たしてしまうものだ。 だから、あの憎い継母を前にしてしまったら……俺は……」

悲しみと苦しみの入り交じった声に、そっと体を起こそうとした時だった。

○○「え? ゲイリー、さん……?」

いつの間に、傍に来ていたのだろう。

起こしかけた体を、ぐっとベッドに押さえつけられた。

闇の中、黒髪の合間に光る瞳が、じっと私を見下ろしている。

ゲイリー「呪いに飲み込まれ、俺が俺でなくなる前に……。 ……おまえの温かさを感じておきたい」

悲痛な声に、心臓を鷲掴みにされたように胸が苦しくなる。

○○「ゲイリー……さん? っ!?」

彼の手が、私の胸元に伸ばされる。

強引な痛みに顔を歪めたけれど、それでも私は彼をじっと見つめた。

○○「やっ……ゲイリーさん……っ!」

ゲイリーさんが、私の首筋に顔を埋め唇を這わせる。

○○「やめ……!!」

その時、ゲイリーさんの体が小刻みに震えていることに気づいた。

(……怖いんだ)

○○「ゲイリーさん……」

胸にどうしようもない切なさがこみ上げて、彼の名前しか言葉にできない。

それでもそっと、ゲイリーさんの頭を抱きしめると……

ゲイリー「!!」

ゲイリーさんが、ぴたりと動きを止めた。

○○「ゲイリー……さん?」

ゲイリーさんの方が、ひどく傷ついたような顔をして私を見る。

それから、優しく私を抱きしめた。

ゲイリー「すまなかった。○○……どうかしていた。 もう何もしないと約束する……、だから、このままこうして、眠ってもいいか……?」

○○「……はい」

私達はその晩、互いの心と温もりを確かめ合うように、きつく抱き合って眠りに就いたのだった…―。

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