太陽最終話 サンタクロースへのプレゼント

雪の匂いが、街中に満ちている。

エドモントさんに呼ばれた私は、市場を訪れていた。

(エドモントさん、プレゼントが決まったって言っていたけど……)

辺りを見回していたその時、どこからともなくシャンシャンシャンと美しい鈴の音が聞こえてきた。

(この音は……?)

エドモント「◯◯、お待たせ」

エドモントさんは大きく膨れた白い袋を背負っている。

◯◯「エドモントさん、その袋……」

エドモント「プレゼントだよ。これに決めたんだ」

彼が袋の中から取り出したのは、真っ白な丸い鈴飾りだった。

手に取るだけで、シャランとかわいらしい鈴の音が聞こえる。

(今聞こえたのは、この鈴の音だったんだ)

◯◯「かわいいですね。でも、どうして鈴に?」

エドモント「サンタクロースは鈴の音を響かせて街にやってくるんだろう? 真っ白な雪が降るクリスマスに、サンタクロースが来たことを思い出してくれたら嬉しいなって。 皆に配ることはできないけれど、できる限り多くの街で多くの人々に手渡したいんだ」

彼の笑顔を、白い息が包む。

(エドモントさんらしいな)

◯◯「とても素敵なプレゼントですね! 皆、絶対に喜んでくれると思います」

エドモント「そうだといいな」

エドモントさんは、穏やかにつぶやいた…ー。

……

翌日…一。

鈴の入った袋を持って歩き出した途端、エドモントさんに気づいた街の人が、続々と集まってくる。

街の人1「エドモント様。今日もまた来ていただけるなんて」

エドモント「皆に、クリスマスプレゼントがあるんだ」

街の人1「王子自ら、わざわざプレゼントを?」

街の人2「まあ、かわいらしい鈴! ありがとうございます!」

街の人々は一様に驚きと喜びを顔ににじませ、プレゼントを受け取っている。

エドモント「こちらこそ、街にクリスマスの飾りつけをしてくれてありがとう。 皆のおかげで、とても素晴らしいクリスマスになった」

エドモントさんの笑顔が、街の人々も笑顔にする。

(すごい……皆、とても幸せそう)

冷たい雪が、私達の肩を静かに濡らしていく。

けれど、いつの間にか心は温もりでいっぱいになっていた…ー。

……

市場とスラムの人達に鈴を配り終えた私達は、聖堂を訪れた。

子ども達の演奏の練習を邪魔しないよう、そっと聖堂内を覗いてみたけれど……

エドモント「あれ? この香りは……」

私達を待っていたのは、紅茶の香ばしい香りと、子ども達の笑顔だった。

子ども1「エドモント王子がプレゼントを配ってるって聞いて……」

子ども2「少しでも体を休めてもらいたいと思って、紅茶を用意しました」

子ども3「エドモント王子とお姫さま、どうぞ召し上がってください!」

子ども達は小さな手で、エドモントさんにそっとカップを差し出す。

エドモント「ありがとう。こんなおもてなしをしてくれるなんて……感激だな」

破顔したエドモントさんが、言葉を詰まらせながらカップに唇を寄せる。

エドモント「……とてもおいしい。今日の紅茶は、格別だ」

エドモントさんはそのお返しにと、皆に鈴飾りを配っていく。

子ども達は鈴飾りを手に取り、弾けるような笑顔を見せた。

(なんて素敵な光景なんだろう……)

エドモントさんと子ども達が笑いながら、言葉を交わしている。

(幸せが溢れてる……)

私はその光景に、いつまでも見入っていた…ー。

……

子ども達の歌声が、夕焼けに染まる街並みに溶け込んでいく。

プレゼントを渡し終えた私達は、聖堂を後にした。

◯◯「お疲れ様でした。エドサンタさん、大人気でしたね」

私の言葉に、エドモントさんは照れくさそうに眉尻を下げる。

エドモント「サンタクロースというのは、思った以上に大変な役割だね。でも、それ以上にとてもやり甲斐がある。皆の嬉しそうな顔も見ることができた。 サンタクロースをやって、よかったよ」

エドモントさんは、満足げに小さく息を吐いた。

◯◯「サンタクロースはプレゼントをあげてばかりで……。 サンタクロースにも、何かプレゼントが必要ですよね」

(エドモントさん、どんなプレゼントなら喜んでくれるかな?)

(何か特別な、思い出に残るようなものを渡したいな……)

エドモント「それなら……」

鈴飾りを入れた袋が、シャン、と音を立てる。

◯◯「……!」

私は、エドモントさんの腕に抱き寄せられていた。

◯◯「あ、あの」

エドモント「君にしてもらいたいことがあるんだ」

◯◯「してもらいたいこと……?」

エドモントさんの吐息が耳をかすめ…ー。

◯◯「……っ」

私は、すっぽりと抱きすくめられていた。

エドモント「俺の傍にいて欲しい。 それがとっておきのクリスマスプレゼントだよ」

エドモントさんの唇が、私の耳たぶに触れた。

優しい声が、私の心を甘く溶かしていく。

◯◯「エドモントさん……」

エドモント「君へのプレゼントも用意してるんだけど……」

◯◯「プレゼント……?」

そっと私を覗き込んだ彼の長いまつ毛に、雪が舞い降りる。

エドモント「俺の心を、君に捧げたい。受け取ってくれるかな?」

まっすぐな眼差しに、胸がとくんと音を立てた。

しばらく、私達は見つめ合って……

◯◯「……はい」

ほてった頬の上で、冷たい雪がふわりと溶けていく。

遠くで、クリスマスを彩る鈴の音が微かに響いていた…ー。

おわり。

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