太陽最終話 大切な人

フリューさんと水鏡の話をしながら、運命の相手に思いを巡らせていると…-。

突然、礼服を身に纏った一人の男性が目の前に現れた。

??「お話中失礼いたします。トロイメアの姫君……ですよね?」

〇〇「はい……あの、あなたは……?」

??「私はロッド、アフロスの伯爵です。姫君、ぜひ私と水鏡の前に立っていただけませんか?」

〇〇「えっ?」

突然の申し入れに驚きを隠せず、目を丸くしていると…-。

ロッド「本日、宣誓の際に運命の相手が近くにいると水鏡のお告げがあったのです。 私の運命が導かれるとするならば、相手は貴女がいい」

〇〇「そ、そんな……! 急に言われても、私は……!」

(たった今会ったばかりだというのに、運命の相手だなんて……)

突拍子のないことを言われている気がして、困惑の表情でその男性を見つめる。

しかし、怯むことなくその男性は私に尋ねた。

ロッド「突然の申し出となり恐縮ですが……どうか水鏡に運命を問うことにお付き合いいただけませんか?」

〇〇「あの……」

少し強引ではあるものの、紳士的な態度の男性に、断ることができないでいると…-。

〇〇「あっ……」

その男性は、私の手を引いて歩き始めてしまう。

その時…-。

 

フリュー「その手を離してください!」

聞いたことがないほどの大きな声がその場に響き渡る。

〇〇「フリューさん……!」

私は思わず彼の名を呼んだ。

フリュー「〇〇さんは、僕の……大切な人です! あなたの運命の人ではありません!」

フリューさんの声に、周囲の人達が足を止めてこちらを見ている。

ロッド「運命かどうかを確かめるために行くのです」

フリュー「〇〇さんをあなたと行かせるわけにはいきません! その手を離してください」

いつものフリューさんからは想像もできない、芯の通った大きな声……

そして、フリューさんはこちらに向かって歩いてくると、男性の手を掴んだ。

(フリューさん……!)

私はその迫力に驚きを隠せず、目を見開いた。

そして、しばらくすると男性は私の手を離し、小さなため息をつく。

フリュー「〇〇さん」

呆然と立ち尽くす私にフリューさんが手を差し出す。

その時、私はやっと我に返り、フリューさんの手を握った。

ロッド「これは……失礼いたしました。もう、お心を決められた方がいらっしゃったとは」

男性が一言告げると、その場から去って行った。

(心を……決めた……?)

言葉を失っていると、フリューさんがぎゅっと私の手を握り、口を開いた。

フリュー「〇〇さん、大丈夫……?」

〇〇「大丈夫……ですが、驚きました」

フリュー「僕も、自分で自分に驚いてる……」

そう言うと、私達は目を合わせ、声を上げて笑った。

〇〇「フリューさんが、あんな大きな声を出すところなんて、私初めて見ました」

フリュー「きみが見ず知らずの男性に連れ去られてしまうと思ったら、自然と声が……」

〇〇「……でもすごく嬉しかったです。フリューさんが、まさかあんな……」

フリュー「当然だよ、きみは僕の大切な人だから」

〇〇「え……」

『大切な人』……はっきりと告げられたその言葉に、胸がドキドキと音を立てる。

〇〇「あ……ありがとうございます」

フリュー「あ……」

フリューさんは照れていたけれど、なんだかいつもより男らしく見えて、私の胸が騒ぎ始めた。

フリュー「じゃあ、僕達も行こう」

〇〇「え……どこへ?」

フリュー「運命の相手を映す水鏡のところへ」

その声は自信に満ち溢れていて、私の心に真っ直ぐに響く。

〇〇「はい……!」

ぎゅっと手を握り合って、私達は神殿の方へと歩き出す。

水鏡が告げる運命の相手……その幸せな予感をお互い胸に秘めながら…-。

おわり。

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