静かな中庭で、○○さんと水鏡の話をしていた時…―。
(あの人達は……?)
僕らの姿を見つけ、数人の男性が傍へやってきた。
??「お話中失礼いたします。トロイメアの姫君……ですね?」
一人の男性が、○○さんの前で丁寧に挨拶をする。
??
「私はロッド、アフロスの伯爵です。姫君、ぜひ私と水鏡の前に立っていただけませんか?」
(え……?)
伯爵と名乗った彼の言葉に、心臓がどくんと嫌な音を立てる。
○○「えっ?」
突然の申し出を受け、○○さんも驚きを隠せないようだった。
ロッド「私の運命が導かれるとするならば、相手は貴女がいい」
(そんな……)
目の前で○○さんへの想いを告げられ、ひどく胸がざわめいた。
○○「あの……」
あくまで紳士的な態度の男性に、○○さんは断り切れず言葉を濁す。
突然現れた彼が、彼女の心を揺らしているとわかった時…―。
(嫌だ……彼女を誰にも渡したくない……!)
○○「あっ……」
ついに男性は、○○さんの手を引いて歩き始めた。
(○○さん……!)
その瞬間……
フリュー「その手を離してください!」
かっと頭に血が上り、気づけば大きな声を上げていた。
○○「フリューさん……!」
とっさに振り返った○○さんが、驚いたように目を見張る。
けれど、僕は男性をきつく見据えたまま大声で叫んだ。
フリュー
「○○さんは、僕の……大切な人です!」
「あなたの運命の人ではありません!」
考えるより早く、次々と言葉が口をつき、周囲の人々の好奇な視線にも構わず、僕は男性と睨み合った。
フリュー
「○○さんをあなたと行かせるわけにはいきません! その手を離してください」
僕は男性の腕を強く掴み、その場に引き留める。
すると……
男性は○○さんの手を離し、小さく息を吐いた。
フリュー「○○さん」
そっと手のひらを差し出すと、彼女が嬉しそうに握り返してくれる。
ロッド
「これは……失礼いたしました。もう、お心を決められた方がいらっしゃったとは」
男性は残念そうに告げると、その場から静かに去って行った。
フリュー「○○さん、大丈夫……?」
○○「大丈夫……ですが、驚きました」
○○さんと手を繋ぎ、大切な温もりを確かめる。
(彼女を奪われずにすんで、よかった……)
心から安堵すると、自然に笑みがこぼれた。
フリュー「僕も、自分で自分に驚いている……」
二人で目を合わせ、軽く笑い合う。
フリュー
「きみが見ず知らずの男性に連れ去られてしまうと思ったら、自然と声が……」
○○「……でもすごく嬉しかったです。フリューさんが、まさかあんな……」
(○○さん……)
恥ずかしそうにうつむく彼女が、たまらなく愛しくなる。
フリュー「当然だよ、きみは僕の大切な人だから」
ようやく迷いを捨て、彼女への想いをはっきり口にすると……
○○「あ……ありがとうございます」
彼女は頬を赤く染め、恥ずかしそうに視線を逸らした。
(ようやく伝えられた……)
二人で照れてしまい、また小さく笑い合う。
フリュー「じゃあ、僕達も行こう」
○○「え……どこへ?」
(もう、僕は忘れない……)
繋いだ手を握りしめ、○○さんに微笑みかける。
フリュー「運命の相手を映す水鏡のところへ」
すると、彼女は驚いたように目を見張り……
○○「はい……!」
未来への期待に満ちた、幸せな笑顔を見せてくれた。
(僕らは運命で結ばれてると信じてる……)
二人の心をしかと重ね、神殿へ向かって歩き出した…―。
おわり。