アヴィ「こいつを傷つけるのは、俺が許さねえ!」
アヴィの鋭い声が神殿内に響き渡る。
オルガ「くそ……っ! また俺は、こいつに……!!」
剣を弾かれ、利き腕を反対側の手で押さえたオルガさんはうな垂れる。
すぐさま兵士がその姿を取り囲み、オルガさんは外へと連行されていった。
〇〇「アヴィ……」
震える声で、名前を呼ぶ。
(来てくれた……)
ぎゅっと手を握りしめると、私を抱いたアヴィの手が離れていく。
アヴィ「……悪かったな、待たせちまって」
ふっと口元に苦い笑みを浮かべ、アヴィがもう一度、私の手を取る。
今度は優しく、無事をしっかりと確かめるように。
アヴィ「けど……『誓いません』って、お前、可笑しいだろ」
〇〇「だって、あのときは…―」
軽く吹き出すアヴィを前に、私は頬を膨らませた。
だけど、アヴィは私をぎゅっと抱き寄せて…-。
〇〇「……っ」
心が、大きく揺さぶられる。
耳元にアヴィの穏やかな声が聞こえてくる。
アヴィ「ほっとしたよ、お前が無事で…-」
(アヴィ……)
私はしばらくの間、アヴィの大きな腕に包まれた。
心地の良い体温と、穏やかに鳴り続ける彼の心音が、私を落ち着かせてくれる……
その時、祭壇に飾られていた水鏡が柔らかな光を放ち始めた。
アフロス王「これは……!」
〇〇「え……?」
水鏡はアヴィの姿こそ映しはしないけれど、放ち始めた光が、私達を優しく包み込んだ。
アフロス王「……どうやら、女神も貴方達を祝福しているようだ」
〇〇「女神さまが……?」
アヴィ「そうか」
〇〇「えっ」
アヴィは自信に満ちた笑みを軽く口元に浮かべると、私の手を引いて、祭壇の外へと出た。
すると…-。
私達の姿を見て、騒ぎに駆けつけた人々から、わっと賞賛の声が上がった。
参列した人々1「トロイメアの姫君! よくぞご無事で!」
参列した人々2「アルストリアの王子、万歳!」
(すごい数、こんなにいたんだ……)
〇〇「ありがとう、みなさん。 アヴィも、本当にありがとう」
彼に向き直り、まだ告げてなかった言葉を笑顔と一緒に送る。
アヴィ「……」
〇〇「……アヴィ? ……!」
【スチル】
アヴィは、おもむろに私の体を高く抱き上げた。
人々の歓声がさらに大きくなる。
祝福を告げる声や、はやし立てる口笛も聞こえる。
〇〇「ア、アヴィ!?」
頬に熱が上がる。
たくましい腕に抱き上げられて、少し高い視線から見下ろしたその場には、人々の喜びの顔が並んでいた。
アヴィ「あいつらにも、見せつけておかねえとな」
〇〇「え……? 見せつけるって何をーー」
アヴィ「だから、俺とお前の姿だろ。 たとえ神様が何と言ったって……お前の運命の相手は、俺だ」
耳元に届く、しっかりとした響きに、胸が締めつけられる。
だけどその心地の良い痛みは、温かな幸せに変わり、胸に満ちてくる……
アヴィ「〇〇、お前は、俺が世界中の誰よりも幸せにしてやる」
〇〇「アヴィ……」
彼の広い胸に抱かれ、言葉を心に反芻して何度も頷く。
天よりは柔らかな陽の光が降り注ぎ、人々の拍手と、祝福を願う鐘の音が、いつまでも鳴り響いていた…-。
おわり。