扉が大きな音を立て開け放たれたと共に、兵士を引き連れたアヴィが、祭壇の内部へと闊歩する。
アヴィ「その婚儀、取り止めてもらう!」
参列した人々「……!?」
神殿の内部は、突然の事態に騒然とし始めた。
人々の視線が私とオルガさんと、そしてアヴィに集中する。
オルガ「貴殿……神聖なる儀式の最中にどういうつもりか!」
アヴィ「神聖? それはお前の心に誓って言えるのか? そこの神官と共謀し、神聖な儀式を欲望の手で穢したのはお前の方だろう!」
オルガ「……っ!」
アフロスの神官「ひ……っ!」
(共謀……? どういうこと?)
オルガさんと共に名を上げられた神官が扉の奥を見て青ざめる。
そこに新たに現れたのは、威厳あるこの国の王の姿だった。
アフロス王「アルストリアの王子、そなたの助力に感謝する」
アヴィ「いえ。俺は自分の責務を果たしたまでです」
オルガ「な、なな……アヴィ、貴様……っ!」
アヴィの鋭い視線にオルガさんの顔が醜く引き歪んでゆく。
その間にも、アフロス王は兵士達に指示を飛ばす。
アフロス王「即刻、その神官を捕らえよ! 神の神託を授かる我が国で、このようなことは決してあってはならぬ!」
兵士達は靴音を響かせ、私の目の前にいた神官を取り囲んだ。
しかし、オルガさんは……
オルガ「アヴィ……! 邪魔をさせるものか……!!」
〇〇「……っ、アヴィっ!!」
言うが早いか、オルガさんは私を背後より捕え、儀式用に帯刀していた剣を引き抜いた。
アヴィ「オルガ、〇〇を離せ!!」
アヴィも素早く剣を引き抜き、オルガさんに相対する。
にらみ合いは一瞬だった。
オルガ「くっ、トロイメアの姫は貴様には渡さんっ!」
オルガさんは大きく剣を振り上げると、アヴィへ振り落とす。
しかしそこに青白い閃光が放たれる。
それは目にも留まらぬ早さのアヴィの剣の切っ先だった。
たちまちオルガさんの剣は弾かれ、金属音が大理石の床に響く。
アヴィ「〇〇っ!!」
〇〇「アヴィ!」
一瞬の隙を突き、私はオルガさんの手より逃れた。
アヴィの大きな腕が私の体を強く抱きしめる……
アヴィ「こいつを傷つけるのは、俺が許さねえ!」
アヴィの透き通った声が、神殿の高い天井にこだました…-。