幸せな思い出に浸った後、リカさんに連れてこられた場所は…-。
〇〇「ここも、ショコルーテが出しているお店なんですか?」
リカ「そう」
店はチョコレートショップというよりも、洗練された服飾店のようで……
その高貴な雰囲気に、知らず背筋が伸びてしまう。
リカ「そんな気張らなくてもいいって。オーナーがちょっとこだわり性なだけだから」
〇〇「はい……」
リカ「まあだからこそ、いいチョコレートがここに並んでる」
リカさんの言う通り、店内には定番のものからワールドサロンのために用意された特別なものまで……
たくさんのチョコレートが並んでいた。
〇〇「どれも綺麗……」
いろいろな形や色をしたチョコレートに、目が釘づけになる。
私はリカさんに案内され、胸を弾ませながら店内を進んでいった。
(あ……)
ふと、あるチョコレートに目を引かれ、私は思わず立ち止まる。
リカ「気に入った?」
そんな私の様子に、リカさんもどこか嬉しそうに目を細めた。
リカ「それ、新作なんだよ。お前に食べてもらいたくて、持ってきた」
リカさんがワールドサロンに持ってきたチョコレートは、まるで宝石のような輝きを放っていた。
(これ、本当にチョコレートなんだよね? すごく綺麗……)
そのチョコレートから目が離せなくなり、思わず見入ってしまう。
リカ「まあその顔見たら、感想は聞かなくてもわかるけど」
〇〇「はい……どれも綺麗で、食べるのがもったいないです」
リカ「そう言うだろうなって思ったけど、食べてもらわないと困る」
リカさんはふっと笑みを浮かべ、ディスプレイに視線を落とした。
その視線を追うと、今度は色とりどりのチョコレートが視界に飛び込んできて……
〇〇「こっちのものは…-」
リカ「いいのに気づいたな。それは今まで交流した国をイメージしたチョコレートだ。 もちろん、お前と一緒に行ったとこもな」
〇〇「これは、四季の国……こっちは、こよみの国ですね」
リカ「そうそう。こっちはアンキュラで、それが紅茶の国。宝石の国もある」
〇〇「どれも素敵ですね。でも、アンキュラのチョコレートだけすごくシンプルなような……」
他のものとはちょっと違う、無骨な見た目のチョコレートを、私はついまじまじと見つめてしまう。
リカ「ほら、アンキュラの奴らって、男気がある感じの印象が強くてさ。 しかもそれ、塩チョコだから」
〇〇「塩って……海だから?」
リカ「そう。単純だろ? でも、その塩はアンキュラで作ったものを取り寄せたんだ」
〇〇「そうなんですね」
目には見えないけれど、そこにリカさんのこだわりを強く感じて、妙に胸が熱くなった。
(リカさんの気持ちが、胸に響いてくる)
(それだけ、私達の距離が近づいたってことなのかな)
〇〇「本当に……どれも、すごく素敵です」
リカ「ありがと。でも、これだけじゃない。まだ大事なとっておきがある」
リカさんはそう言うと、私に銀製の蓋で閉じられたトレイを差し出した。
リカ「開けて」
ゆっくりとその蓋を開けると…-。
そこには、薔薇を模したチョコレートが咲いていた。
(薔薇……ヴィラスティン? ブルメリアかな?)
リカ「……お前のために、新しく用意した」
〇〇「私のために……?」
その言葉が胸に甘く響き、もう一度目の前の薔薇に視線を落とす。
美しく繊細なチョコレートから、リカさんの想いが伝わってくるようで……
(ドキドキする……)
気恥ずかしさを誤魔化したくて、私はそっと息を吐き出すのだった…-。