静まりかえった夜の部屋で、アマノさんの強い瞳が私をただ見つめている…ー。
アマノ「君にお願いがあります」
○○「私に……できることなら」
アマノ「……ありがとうございます」
ふっと目元を和らげ、彼が胸元から取り出したのは……
○○「これって……」
アマノ「はい。先ほど庭で摘んできました」
彼の手の中にあったのは、可憐な一房の藤の花だった。
微かに夜露に濡れた藤が、慎しく彼の手の中で咲いている。
アマノ「君にこの花を持っていて欲しいのです。 僕の帰りを待ちながら、どうか祈っていて欲しいのです」
彼の手が、私にその花を優しく握らせる。
ひんやりとした夜露が指先を濡らした。
(どうして……)
その冷たさが、胸を意味もなく締め付ける。
アマノ「……難しいでしょうか?」
○○「いいえ!そんなことはありません。 けど…ー」
言いようもない不安に駆られ、私はアマノさんをただ見つめた。
アマノ「僕は駄目ですね……君にそんな顔をさせたい訳じゃないのに。 僕自身も不安なんです。強く決心したはずなのに……。 微かに残る僕の中の迷いが……この弓を引く腕を狂わせてしまわないか……」
○○「……っ」
寂しげに伏せられた瞳を見てられなくて、私は首を横に振った。
○○「……待っています。だから必ず無事に戻ってきてください」
アマノ「……○○」
彼の手にもう一度、体がふわりと抱き寄せられる。
○○「あ……」
前髪が搔き上げられ、柔らかな口づけが額に落とされた。
アマノ「どうか、祈っていてください……それだけで僕は…ー」
耳元に囁かれた言葉は、私の心の中に強く強く焼きついた…ー。
翌日…ー。
討伐のために身を固めたアマノさんがアカグラを旅立った。
私は彼から預かった藤の花を手にして、その姿を見送ったのだった…ーー。