レンガが敷き詰められた道に、白銀の雪が落ちては消えていく。
◯◯「すごい人ですね。それに、かわいい飾りつけがいっぱいです」
クリスマスらしい飾りが、華やかに市場を彩っている。
エドモント「雪が降ったことで新種の茶葉も生まれて、今は特に街全体が盛り上がってる。 そんな時にクリスマスを取り入れたんだ。かつてないほどの賑わいだよ」
子ども達は初めての雪にはしゃぎ回り、大人達は買い物と談笑を楽しんでいて…ー。
◯◯「皆さん、幸せそうですね」
エドモント「うん、ここまで喜んでくれるなんて……。 本当に、クリスマスをやることにしてよかったと思う。 それに、皆が飾りつけを頑張ってくれたおかげで、こんなに素敵な街並みになった。 感謝の気持ちを込めてプレゼントを選びたい。皆がもっと、喜んでくれるように」
にこりと笑うエドモントさんに、私も微笑み返す。
◯◯「素敵なプレゼントを探しましょう……!」
そう意気込んだはいいけれど…ー。
ひしめき合う店に、私は次から次へと目移りしていた。
雪が舞うスノードームや、ミニチュアのツリーなど、クリスマスにふさわしい雑貨がたくさん並んでいる。
(どれも素敵……)
その時、よそ見をして歩いていたせいで、すれ違う人と肩をぶつけてしまった。
◯◯「あ、すみません……」
慌てて頭を下げた時、マスカットのような香りがふわりと私を包み込む。
◯◯「……?」
顔を上げると、エドモントさんが心配そうに私を覗き込んでいた。
その手は、しっかりと私の肩を引き寄せている。
エドモント「大丈夫?」
耳元で響く声に、胸がとくんと脈打つ。
◯◯「だ、大丈夫です。すみません」
エドモント「俺の方こそ目を離してしまってごめんね。最初から、こうしていればよかった」
エドモントさんは柔和な笑みを浮かべ、私の肩を抱いたまま歩き出した。
彼の温もりが私をしっかりと守ってくれているようで……
◯◯「……」
頬が熱を帯び、言葉が見つからない。
エドモント「さあ、どの店に行こう?」
エドモントさんの優しい声が、一層私の胸を震わせた時…ー。
街の人1「エドモント様ではありませんか?」
その一声に、道行く人々が私達を振り返る。
街の人2「本当だ、エドモント王子だ」
街の人3「こんなところでお会いできるなんて……!」
エドモント「こんにちは。クリスマス、楽しんでいるかい?」
私達を取り囲む街の人々に、エドモントさんは丁寧に対応していく。
(エドモントさん、相変わらずこんなに慕われてるんだ……)
物腰柔らかくも凛とした姿に思わず見とれていると……
店主「エドモント王子、今日は視察ですかい?」
雑貨店の店主さんがエドモントさんに声をかけた。
エドモント「いや、私用で出かけているんだ」
店主「そうだったんですね。どうぞ、よかったら見ていってください」
エドモント「せっかくだから、見ていこうか」
◯◯「はい」
足を進めてすぐに、店頭に並ぶオーナメントボールに目が留まった。
光沢のある生地に細かい模様が織り込まれたボールを手に取ると、シャランと美しい音がする。
◯◯「かわいい……」
店主「ツリーの飾りにもなるし、アクセサリーにもなる。そちら、お勧めですよ!」
リズミカルに振ってみると、それはまるで……
◯◯「サンタクロースが街にやってくる時、鈴の音が聞こえるって言われてるんですけど……。 ちょうどそれがこんな感じで、素敵です」
エドモント「こんな音を鳴らしてやってくるんだね。もう一度聞かせて?」
エドモントさんの耳元に寄せ、もう一度シャンシャンシャン、と鳴らしてみる。
エドモント「とても澄んだ音だね。これ、気に入った?」
◯◯「はい、とても」
エドモント「じゃあ、これを一つもらおうか」
満面の笑みを浮かべた店主さんが、すかさずもう一つのボールをエドモントさんに手渡す。
店主「せっかくなんで、二人で持っていってください!」
エドモント「え? けど…ー」
店主「いいんですいいんです。エドモント王子のおかげでクリスマスができるんですから。おまけです!」
有無を言わさぬ声色に、エドモントさんは小さく笑って私を見た。
そして……
エドモント「お揃いだね」
受け取ったボールを、私が持っていたボールにこつんとぶつける。
二つのボールは寄り添うように、シャランと美しい音を奏でた…ー。