第3話 市場の賑わい

レンガが敷き詰められた道に、白銀の雪が落ちては消えていく。

◯◯「すごい人ですね。それに、かわいい飾りつけがいっぱいです」

クリスマスらしい飾りが、華やかに市場を彩っている。

エドモント「雪が降ったことで新種の茶葉も生まれて、今は特に街全体が盛り上がってる。 そんな時にクリスマスを取り入れたんだ。かつてないほどの賑わいだよ」

子ども達は初めての雪にはしゃぎ回り、大人達は買い物と談笑を楽しんでいて…ー。

◯◯「皆さん、幸せそうですね」

エドモント「うん、ここまで喜んでくれるなんて……。 本当に、クリスマスをやることにしてよかったと思う。 それに、皆が飾りつけを頑張ってくれたおかげで、こんなに素敵な街並みになった。 感謝の気持ちを込めてプレゼントを選びたい。皆がもっと、喜んでくれるように」

にこりと笑うエドモントさんに、私も微笑み返す。

◯◯「素敵なプレゼントを探しましょう……!」

そう意気込んだはいいけれど…ー。

ひしめき合う店に、私は次から次へと目移りしていた。

雪が舞うスノードームや、ミニチュアのツリーなど、クリスマスにふさわしい雑貨がたくさん並んでいる。

(どれも素敵……)

その時、よそ見をして歩いていたせいで、すれ違う人と肩をぶつけてしまった。

◯◯「あ、すみません……」

慌てて頭を下げた時、マスカットのような香りがふわりと私を包み込む。

◯◯「……?」

顔を上げると、エドモントさんが心配そうに私を覗き込んでいた。

その手は、しっかりと私の肩を引き寄せている。

エドモント「大丈夫?」

耳元で響く声に、胸がとくんと脈打つ。

◯◯「だ、大丈夫です。すみません」

エドモント「俺の方こそ目を離してしまってごめんね。最初から、こうしていればよかった」

エドモントさんは柔和な笑みを浮かべ、私の肩を抱いたまま歩き出した。

彼の温もりが私をしっかりと守ってくれているようで……

◯◯「……」

頬が熱を帯び、言葉が見つからない。

エドモント「さあ、どの店に行こう?」

エドモントさんの優しい声が、一層私の胸を震わせた時…ー。

街の人1「エドモント様ではありませんか?」

その一声に、道行く人々が私達を振り返る。

街の人2「本当だ、エドモント王子だ」

街の人3「こんなところでお会いできるなんて……!」

エドモント「こんにちは。クリスマス、楽しんでいるかい?」

私達を取り囲む街の人々に、エドモントさんは丁寧に対応していく。

(エドモントさん、相変わらずこんなに慕われてるんだ……)

物腰柔らかくも凛とした姿に思わず見とれていると……

店主「エドモント王子、今日は視察ですかい?」

雑貨店の店主さんがエドモントさんに声をかけた。

エドモント「いや、私用で出かけているんだ」

店主「そうだったんですね。どうぞ、よかったら見ていってください」

エドモント「せっかくだから、見ていこうか」

◯◯「はい」

足を進めてすぐに、店頭に並ぶオーナメントボールに目が留まった。

光沢のある生地に細かい模様が織り込まれたボールを手に取ると、シャランと美しい音がする。

◯◯「かわいい……」

店主「ツリーの飾りにもなるし、アクセサリーにもなる。そちら、お勧めですよ!」

リズミカルに振ってみると、それはまるで……

◯◯「サンタクロースが街にやってくる時、鈴の音が聞こえるって言われてるんですけど……。 ちょうどそれがこんな感じで、素敵です」

エドモント「こんな音を鳴らしてやってくるんだね。もう一度聞かせて?」

エドモントさんの耳元に寄せ、もう一度シャンシャンシャン、と鳴らしてみる。

エドモント「とても澄んだ音だね。これ、気に入った?」

◯◯「はい、とても」

エドモント「じゃあ、これを一つもらおうか」

満面の笑みを浮かべた店主さんが、すかさずもう一つのボールをエドモントさんに手渡す。

店主「せっかくなんで、二人で持っていってください!」

エドモント「え? けど…ー」

店主「いいんですいいんです。エドモント王子のおかげでクリスマスができるんですから。おまけです!」

有無を言わさぬ声色に、エドモントさんは小さく笑って私を見た。

そして……

エドモント「お揃いだね」

受け取ったボールを、私が持っていたボールにこつんとぶつける。

二つのボールは寄り添うように、シャランと美しい音を奏でた…ー。

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