第4話 私がいる理由

その後…-。

私達は大通りを抜け、川沿いのレストランへと入った。

〇〇「わぁ……!」

テーブルに置かれた料理を前に、私は思わず感嘆の声を漏らす。

彩りの良い野菜をふんだんに使った料理は、まるでパレットのようで……

ウィル「この国は名前の通り色には厳しいから、すべてに対して色彩を大切にしてるんだ。 もちろん、料理にもね」

ウィルさんが野菜をフォークの上にのせ、私にウインクする。

〇〇「食べるのがもったいないくらいです」

ウィル「おっと、せっかく頼んだから食べてくれないと寂しいなぁ」

〇〇「も、もちろんです」

見とれていたことに気づいて、少し慌てながらフォークを手に取る。

くすりと声を押し殺した笑い声が、テーブルの向こうから聞こえた。

(笑われた……)

ウィル「ホラーレストランのメニューに取り入れたらいいと思わない? ただし、僕がやるなら血のように真っ赤な料理とか、本物の目玉のようなゼリーとかかな?」

ウィルさんの言う料理を想像してしまい、私はナプキンで口を押さえた。

ウィル「どうやら悪くないメニューみたいだ!」

〇〇「え?」

ウィル「〇〇の青ざめた顔、レストランで出した時の客の反応が手に取るようにわかるよ」

ウィルさんはメモ帳のようなものを取り出すと、思いついた案を書き始める。

(ウィルさん、すごいな……)

ついその様子を見つめてしまっていると……

ウィル「おっと、食事中まで仕事をするのはマナー違反だったね」

メモ帳をしまいながら、ウィルさんが目をすがめる。

〇〇「いいえ、大事なお仕事なので」

(それより……私がいるとウィルさんの仕事の邪魔になってるんじゃ)

さっきからそれが気になっていたけれど、ウィルさんには聞けずにいた。

ウィル「何か考えごと?」

〇〇「え……?」

ウィル「さっきから君、時々そういう顔をしている。 君の怖がっている表情は好きだけど、元気がないのは嫌だな。 悲鳴は元気がいい方がいいだろう?」

冗談交じりの言葉に、私は思わず笑ってしまう。

ウィル「うん。その顔だ」

その時…-。

入り口から数人の男の人達がこちらへ駆けて来るのが見えた。

スタッフ「お食事中すみません」

男の人達の表情を見て、ウィルさんの顔が真剣なものに変わる。

ウィル「いいよ、どうしたんだい?」

スタッフ「さっきの血糊、衣装につくとどうも地味で…-」

ウィル「地味か……なら…-」

ウィルさんがいろいろと指示を出すと、スタッフの人達は礼をして慌てて店から出て行った。

ウィル「ごめんね! 落ち着かなくて」

〇〇「いろいろなことを知ることができてためになります」

ウィル「君は本当に、いい子だねえ」

〇〇「それより……私がいると仕事の邪魔じゃないですか?」

思い切ってウィルさんに尋ねると、彼は驚いたようにまばたきを繰り返した。

ウィル「邪魔? 君の意見が聞きたいと思って呼んだのに? それに、僕がそろそろ君に会いたかったんだよ」

伏し目がちにつぶやかれた言葉に、胸が温かくなった…-。

……

食事も終わり、宿泊先まで私を送り届けると、ウィルさんは私に向き直り、両手を包んだ。

ウィル「明日も付き合ってくれると嬉しいな」

〇〇「明日……」

ウィル「君の素直な反応が欲しいんだよ」

ウィルさんが私の顔を覗き込み、優しい声で囁く。

〇〇「わかりました……!」

ウィル「それじゃあ、明日」

去っていくウィルさんに手を振り、私はいつまでもその後ろ姿を見つめていた…-。

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