第5話 わだかまり

街の男性「あの王子は、俺達が一番大変な時に国にいなかったじゃないか。これくらいやってもらって当然だ!」

(そんな……)

街の女性「あんた、言いすぎだよ!」

セラスさんを睨む男性の元へ、女性が慌てて駆け寄る。

街の男性「本当のことだろ! 今さら国のためって言われたって信用できるもんか!」

〇〇「待ってください。セラスさんはユメクイから皆さんを守るために、一人でマグナに…-」

セラス「どないしてん?」

セラスさんの声が聞こえて、私は思わず体を震わせた。

〇〇「私のせいです。花の植え方でちょっと間違ってしまって……」

セラス「……アホ。花の植え方に、オレもユメクイもマグナも関係ないやろ?」

(聞こえてたんだ……)

セラス「どないしてん。言いたいことあるなら言ってええよ?」

セラスさんが笑顔で促すけれど、誰も言葉にできずに口を閉ざしてしまう。

重い空気が流れる中、セラスさんは花の苗を一つ手に取った。

セラス「花で癒されるはずが、空気悪くなったら元も子もないなぁ。 ……なんて、空気悪くさせたんはオレか」

〇〇「セラスさん……」

セラスさんが街の人々を見渡す。

騒ぎに気づいたのか、他の人達も作業の手を止め、私達の方を見つめていた。

セラス「皆、ほんまに悪かった」

いつもの笑みを消し、セラスさんが皆に向かって深々と頭を下げる。

突然のことに、人々が驚きに息を呑んだ。

セラス「皆が一番辛い思いしとった時におらんで、王子としてあかんかったと思う。 ほんま、堪忍な」

〇〇「セラスさん……」

セラスさんは頭を下げたまま、拳を握りしめた。

セラス「オレはあん時、自分が今せなあかんと思ったことをした。 その選択を間違ったとは思うてへんけど……でも、皆に相談してから行かなあかんかったよな。 皆、モヤッとしてたんやろ?」

セラスさんの胸の内を言い当てられたのか、街の人達が互いに顔を見合わせる。

セラス「言いたいことがあっても、王子やから言えへん……。 けど、そうして飲み込んだ言葉が、こう胸の中にずっとあって、消えへんのやろ?」

自分の胸に手をあて、セラスさんは瞳を閉じた。

セラス「オレもいつ言うたらええのか、悩んでてん。 でもそれが、今日なんかなって思って」

セラスさんは私の方へ視線を向け、わずかに笑みを浮かべる。

セラス「けど、これで許されるなんて思ってへん。 せやから俺のこれからを見て、許すか許さへんか決めて」

街の男性「王子……」

セラス「それでどうやろか?」

セラスさんは、ひとりひとりの顔をゆっくりと見渡す。

街の男性「ふん……。 ……それなら、ちゃんとできるってところを見せてくださいよ」

セラス「せやな。んじゃ、作業再開や。皆、頑張ろな」

男性とセラスさんが作業場へと戻っていく。

それにならうように、皆が中断していた作業を再開させた。

(皆……)

日が傾き、空が赤く染まり始める。

あたたかなオレンジ色の光が、笑みを浮かべる皆の顔を優しく照らしていた…-。

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