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カノエ『騎士……!?』
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私が騎士の役職を希望すると、カノエさんが大きく目を見開いた。
〇〇「駄目でしょうか?」
カノエ「駄目というわけではないが……王か女王がいいかと思っていた」
〇〇「どうしてですか?」
カノエ「痛みを感じないとはいえ、お前を危険な目に遭わせたくない」
〇〇「!」
優しい言葉が、私の心を甘くくすぐる。
(嬉しいけど……)
守ってもらうばかりではいたくなくて、私はぎゅっと手を握りしめた。
カノエ「だから……考え直してみてくれないか」
(カノエさんは……責任感が強いから)
それゆえ、彼は何かあると一人で抱え込んでしまうことが多かった。
言葉が足りなかったり、優しさが裏目に出て、諍いとなったこともある。
(だから……)
〇〇「カノエさんに守られてばかりじゃなくて、隣で支えられないかなって」
カノエ「お前……」
真剣に告げると、カノエさんもまっすぐに私を見つめてきた。
〇〇「駄目、でしょうか? 一生懸命、頑張ります」
カノエ「そこまで気張らなくていい」
そう言うと、カノエさんは柔らかに口元を緩めた。
カノエ「ふっ……」
普段は凛々しく毅然としたカノエさんの表情が和らぐと、胸がくすぐったいような心地になる。
カノエ「わかった……頼りにしている。だが、無理はするなよ」
〇〇「カノエさん……はい!」
気づくと、チームメイト達がニヤニヤと笑みを浮かべながら私達を見守っていた。
(皆、ずっと見て…―)
途端、恥ずかしさが募り頬が熱くなる。
カノエ「お前ら、何へらへらしてるんだ」
チームメイト1「いやー、いいもの見せてもらいました」
チームメイト2「ほんと、お似合いだなって思ってただけですよ」
〇〇「お、お似合いって……!」
てらいなく言われると、ただでさえ早い鼓動がますます騒がしくなってしまう。
ちらりと、カノエさんを見上げると……
カノエ「……馬鹿なことを言ってないで練習するぞ」
さっと私達に背を向け、一人フィールドへと歩き出す。
後ろから覗く彼の耳は、わずかに赤く染まっているような気がした。
〇〇「私達も、行きましょう」
チームメイト達「はい!」
カノエさんの後を追うように、皆でフィールドに向かう。
…
……
やがて、練習が始まり……
カノエ「はぁっ!」
カノエさんは誰よりも早くコツを掴み、隙をついては模擬練習の相手の武器を破壊していく。
先ほどから、もう何度、撃破する音を聞いたかわからない。
(また勝った……!すごい、あっという間に連係も取れてきたし)
カノエさんに引き上げられるようにチームの皆もみるみる上達していった。
カノエ「言った通り、習うより慣れろ、だな。 陣形もこれで整った」
気持ちが高揚しているのか、カノエさんが自信に満ちた笑みを浮かべる。
〇〇「それじゃあ、そろそろ受付にエントリーシートを出しに行きましょうか」
カノエ「ああ……お前ら、○○と行ってくるから練習を続けてくれ」
チームメイト達「了解です!」
与えられる異能力がどんなものになるかで、作戦が最終的に決まる。
期待と不安交じりに胸を高鳴らせながら、カノエさんと二人で受付へと向かうのだった…―。