魔法科学の国・ダンテ 彩の月…―。
各国で広く親しまれているスポーツ、『クライヴァー』…―。
今回は、まだクライヴァーに馴染みの薄い国々へ普及させるため、こよみの国や四季の国の王族達と共に、ここダンテで試合をすることになっていた。
(あれは……)
街を歩いていると、たった今到着したと思しきカノエさんや従者さん達を見つけ、傍に駆け寄る。
今回私は別のチームで参加する予定だったけれど、急遽彼らのチームで戦うことになった。
〇〇「カノエさん、お久しぶりです」
振り返ったカノエさんが、まぶしそうに目を細める。
カノエ「ああ」
口数は少ないけれど、わずかにほころぶ口元から彼も再会を喜んでくれていることが伝わって、そんな彼に、私は笑みを返した。
〇〇「試合、よろしくお願いします」
カノエ「こちらこそよろしく頼む。 お前はクライヴァーの経験があるんだったな」
〇〇「はい。前にも、今回みたいにご招待いただいたことがあるんです」
〇〇「そうか。いろいろと教えてくれると助かる」
競技用の装いに身を包むカノエさんは、精悍でとても格好よかった。
(こよみの国の装いしか見たことがないからかな。なんだか雰囲気が違う……)
〇〇「その格好、似合ってますね」
思わず口に出すと、カノエさんの目が見開かれた。
そして…―。
カノエ「お前もよく似合ってるぞ」
〇〇「あ…―」
思いがけない彼の言葉に、胸の奥が熱くなる。
カノエ「行くぞ」
ふと生まれた甘い雰囲気から逃げるように、カノエさんが表情を引きしめ歩き出す。
(……気まずい思いをさせてしまったかな)
けれど彼はすぐ先で足を止め、待ってくれていた。
カノエ「……」
(カノエさん……)
言葉は少なくても、カノエさんの優しさが伝わってくる。
それがわかることが嬉しくて、私も笑顔で彼の隣に並んだのだった…―。