審判の国・アルビトロ 星の月…-。
街を行き交う人々の賑やかな声が、青い空へと吸い込まれていく。
いつもは荘厳な街並みが、今ばかりは煌びやかに飾りつけられていた。
(素敵……本当にクリスマスがこの国にあるみたい)
私はチルコ・サーカス団の巡業について、アルビトロを訪れていた。
煌めくクリスマスの飾りに思わず見とれていると、一人の男性が聖堂から出てくるのが見えた。
(あれは……)
私の視線に気づいたのか、彼もゆっくりとこちらに顔を向け……
そして、はっと息を呑んだ。
レイヴン「〇〇様……!」
〇〇「レイヴンさん……」
驚いた表情を浮かべるレイヴンさんの後ろから、小さな人影が顔を出す。
クローディアス「〇〇さまだ! こんにちは!」
レイヴンさんの弟であるクローディアス君は、弾むような声を上げこちらに駆けて来る。
〇〇「こんにちは。クローディアス君。あの、お二人とも、どうしてここへ……」
クローディアス「ぼく達、サーカスを見に来たんだ!」
レイヴン「こら、クロード。違うだろう?」
レイヴンさんは、たしなめるようにクローディアス君の頭を撫でる。
レイヴン「私がこの国を訪れたのは、司法の視察のためです。 ですが、クロードがサーカスが開かれていることを知って、ついて来ると聞かなくて……」
クローディアス君への優しい眼差しに、胸がじわりと温かくなる。
レイヴン「まさかあなたにお目にかかれるなんて、思ってもみませんでした」
彼は、すっと胸に手をあて恭しく礼をする。
レイヴン「……お久しぶりです、〇〇様」
〇〇「っ……」
レイヴンさんは、穏やかな笑みを浮かべているのに……
彼の所作はどこか儚げで、私は言葉を詰まらせたのだった…-。