第3話 悪戯な温もり

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ラス『ねえ、オレとデートしてよ』

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ラスさんからデートに誘われた翌日…-。

幸せそうに歩く恋人達を横目に、私は待ち合わせ場所にたどり着いた。

(ラスさんは……)

待ち合わせ時間にはまだ早く、当然彼の姿はない。

(さすがに早すぎたかも)

昨日と同じように冷えた空気の中、苦笑していると……

ラス「〇〇」

〇〇「……!」

不意に後ろから抱きしめられて、思わず息を呑む。

けれど、それは聞き覚えのある声と温もりで……

〇〇「先に来てたんですか……?」

ラス「うん。キミに寒い思いをさせるわけにはいかないからね。 来たらすぐに温めてあげられるようにって思って、早く来たんだ」

耳に吐息が触れて……その甘い温もりに、酔わされそうになる。

〇〇「も、もう温まったから大丈夫です……!」

ラス「えー? まだ冷たいよ? ほら」

〇〇「ラスさん……!」

冷たくなった頬に彼の頬が重なり、心臓が大きく跳ねた。

ラス「ふふ、ごめんごめん。今日はせっかくのデートだし、そろそろ行こうか」

ラスさんは腕を解いて、こちらに手を差し出す。

ラス「あ、今日は力を使おうなんて思ってないから……安心して。ね?」

(え……?)

ラスさんは『色欲』の監獄を管理する王家の王子で……

その色欲の力に、これまで多くの女性が魅了されてきた。

(どうして、いきなりそんなことを言うんだろう)

(もしかして私が怖がってるって思ってるのかな……?)

ラス「歩いてる間は、抱きしめてあげられないから……せめて手だけでも温かく、ね?」

安心させるように優しい声音で言う彼に私は……

返事の代わりに、私はそっとラスさんの手を取る。

ラス「ふふ。こういうの、なんかいいね」

手を繋いだ私達は、ゆっくり歩き始める。

……

そうして、連れられるままに訪れたのは…―。

〇〇「スレッドツアー?」

ラス「そう。この乗り物に乗って、アルビトロの雪景色を楽しむんだ」

それは、クリスマスの施策の一環として行われているものらしい。

(なんだかサンタクロースみたいで楽しそう)

ソリのような形をした乗り物を見ていると、それだけでわくわくしてくる。

(あれ? でも……)

〇〇「ラスさん、アルビトロには公務で来たって言ってましたよね? どうしてこんな場所を知ってるんですか?」

ラス「調べたんだよ。せっかくのキミとのデートだからね」

当然のように言って、切れ長の目を細める彼に……心音が、密かに跳ねる。

そうしているうちに、順番が回ってきて…-。

ソリのような形の乗り物は、ゆっくり進み始め……やがてスピードに乗って雪の上を滑り出した。

〇〇「結構スピードがあるんですね……!」

ラス「うん。でも、思った以上に楽しいね」

〇〇「はい! 雪景色も綺麗ですし、すごく楽しいです……!」

けれど、その時……

〇〇「!」

突然、顔に雪しぶきがかかる。

ラス「あははっ! 顔、真っ白」

見れば、ラスさんにもたくさんの雪がかかっていて……

〇〇「ラスさんの顔にも雪がついてます」

彼の顔に手を伸ばし、雪を払う。

ラス「ありがとう。それじゃあオレも」

私の顔についた雪は、ラスさんが優しく払ってくれた。

(ラスさんのこんな笑顔が見られるなんて……嬉しい)

楽しそうな彼の姿を見ていると、心が満たされていく。

そうして、しばらくアルビトロの景色を楽しんでいたものの……

気づけば乗り物のスピードは、かなり速くなっていた。

(少し怖いかも……)

恐怖心から、私は思わず身を固くする。

けれど、その時…-。

ラス「……遠慮しないで、もっとこっちに来なよ」

〇〇「……!?」

突然ぐっと腰を引き寄せられて、ラスさんと密着する。

ラス「うん、温かい。 それに……こうした方がキミも安心でしょ? なかなかのスピードだもんね、これ」

〇〇「あ……」

(もしかして、私が怖がってるのに気づいて……)

ラスさんは、私を安心させるように微笑んでいる。

その優しさに心が温まるのを感じながら、私は彼の肩に頭を預けたのだった…-。

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