翌日の夜・・・・ー。
誰もいないパーティーホールを、星々が照らしている。
(がんばらなきゃ)
私は一人、セフィルさんに習ったワルツを練習していた。
(痛い・・・・)
前日から寝る間を惜しんで練習をしていたため、私の足は靴ずれで赤く腫れている。
(でも、セフィルさんと皆さんの役に立ちたい)
すずらん型の蓄音機から、小さな音でワルツが流れている。
その音楽に合わせ、私はダンスホールに靴音を響かせた。
(綺麗な曲・・・・セフィルさんのお母様のために作曲された曲だったっけ)
そんな時、ダンスホールの重い扉が開かれる。
セフィル「メイドに聞いて来てみれば・・・・」
〇〇「セフィルさん・・・・っ」
私を見つめ、セフィルさんが驚いたような声を出す。
セフィル「こんなに遅くまで・・・・練習をされているのですか」
〇〇「はい。ダンスパーティーでちゃんと踊れるようにって思って」
近くまでやって来ると、セフィルさんが柔らかに笑っていることがわかる。
セフィル「・・・・有難うございます」
そっと私の腰を抱き、セフィルさんは私をリードして踊りはじめた。
〇〇「・・・・っ」
思わず足の痛みに顔をしかめると・・・・
セフィル「どうなさいましたか?」
セフィルさんは、すぐにその様子に気がつく。
セフィル「・・・・そのようにご無理をなさらないでください」
私の足に目をやり、セフィルさんが私を抱き上げようとする。
〇〇「やらせてください。私、役に立ちたいんです。 どうしても・・・・」
私を抱き上げようとしていたセフィルさんは、驚いたように動きを止めた。
セフィル「貴女は、本当にお優しいのですね」
そうしてセフィルさんがにっこりと目を細めると、私は思わず息を飲んだ。
(こんな無防備に笑うんだ・・・・)
あまりに柔らかなその微笑みに、私は自然に笑い返す。
セフィル「人のことばかり気遣って・・・・」
気がつくと私は空中に浮いていて、セフィルさんの腕に抱かれていた。
そうして私達は、静かにダンスのステップを踏み始める。
(足が、痛くない・・・・)
(セフィルさんだって、いつも、こうして気遣ってくれる)
静かにワルツが流れる部屋の中、星々がセフィルさんの微笑みを照らしている。
(本当の天使みたい)
その微笑みに、私の胸がトクンと音を立てた・・・・ー。