第4話 特訓の成果は…?

猛特訓の結果、サイさんは紅茶を格好よく淹れられるようになった。

けれど…-。

サイ「うーん」

サイさんは顎に手を当てて、思案顔をしている。

(他にも心配事があるのかな?)

○○「サイさん、どうしたんですか?」

サイ「食べ物のメニューは、何がいいかなって考えていたんだけど。 カルパッチョとかフォアグラのテリーヌとかはどうかな?」

(文化祭に、カルパッチョとフォアグラのテリーヌ……)

サイ「白身魚のムニエルとか、ブイヤベースとかも必要かな?」

(それも少し違うような……)

○○「えっと……」

純粋な瞳に見つめられ、私は思わず言葉を詰まらせてしまう。

サイ「あ、でも、僕達は城のシェフみたいに上手く作れないし、難しいか。 うーん。それじゃあ……。 ○○は何が食べたい?」

○○「そうですね……」

私はサイさんが淹れてくれた紅茶を飲みながら、しばらく考える。

(喫茶というくらいだし、あまり重い料理は違うよね)

○○「紅茶やコーヒーに合う、デザートとかはどうですか?」

サイ「そうか! 言われてみれば、レストランではなく、喫茶だもんね」

サイさんは、納得したように頷きながらポンと手を打つ。

サイ「○○のおかげで、文化祭が成功しそうだ。ありがとう!」

○○「……!」

両手をぎゅっと握られた瞬間、鼓動が跳ね上がる。

サイ「あっ、ごめん! つい……」

慌てて私の手を離す彼の顔は、ほんのりと赤く染まっていて、私の頬も、同じように熱を帯びてきた。

(び、びっくりした。でも……)

(サイさん、すごく喜んでくれているみたいだし、少しでも役に立ててよかった)

(私がサイさんを助けられることなんて、普段あまりないし……)

(今回みたいに頼ってもらえるのって、すごく嬉しいかも)

喜びを胸に、私は彼へと笑顔を向ける。

そうして、数日後…-。

文化祭前日を迎え、学生達は忙しく学園内を走り回っていた。

(サイさん、文化祭の準備は順調かな?)

教室を覗いてみると、サイさんがクラスメイト達にテキパキと指示を出している。

男子学生1「サイ君、この椅子はどこに置けばいいかな?」

サイ「これは、入り口に近い方がいいかな」

女子学生1「ねえ、お砂糖とミルクポットはこんな感じに並べればいい?」

サイ「うん、大丈夫だよ」

(よかった、順調みたい)

サイ「あっ、○○」

サイさんは私に気が付くと、手招きをする。

そうして私が、窓際のテーブルにやってくると……

サイ「お嬢様、こちらへどうぞ」

そう言いながら、サイさんは恭しく椅子を引いてくれる。

その仕草はとても自然で、練習前とは別人のようだった。

○○「サイさん、ありがとうございます」

サイさんは笑顔で頷くと、その場でコーヒーを注ぎだす。

サイ「実は、君を驚かせたくて密かに特訓していたことがあるんだ」

(えっ……)

カップに注がれたコーヒーに、サイさんが優雅に絵を描いていく。

(うわぁ……)

○○「サイさん、すごいですね!」

コーヒーに浮かんだハートに、私は思わず見とれてしまう。

サイ「喜んでくれたみたいでよかった」

サイさんは照れたように微笑む。

(きっと沢山練習したんだろうな……)

その姿を想像するだけで、胸の奥が温かくなる。

男子学生2「サイ君、ちょっといいかな?」

女子学生2「ごめんね。私達だけじゃ、わからないことがあって……」

サイ「ああ、今行く。じゃあね、○○」

(何だか、もったいなくて飲めない)

サイさんの優しさを感じながら、私はコーヒーに浮かぶハートを、いつまでも眺めていた…-。

<<第3話||太陽覚醒へ>>||月覚醒へ>>