第3話 希う青空

ルシアンさんと出会った、翌日…-。

―――――

ルシアン『……俺を庇ったところを、人に見られていたらまずい。 それに、もう暗くなる……行く宛がないのなら、来るがいい』

―――――

ルシアンさんの城にやって来た私は、王子を目覚めさせてくれたお礼にと、従者さんのご厚意でしばらく滞在することになった。

けれど…-。

(寂しいお城……)

街の外れにある小さな城には、ルシアンさんとわずかな従者さん達がいるだけ…-。

(ルシアンさん……体調は大丈夫かな)

彼に会いに行こうと城の中庭を通りがかったとき、鳥の軽やかな鳴き声が聞こえてきた。

それに混じり、男性の笑い声もかすかに聞こえてくる。

(どこから聞こえるんだろう)

何気なく上を見上げると…-。

ルシアン「ははっ……焦るな、まだある」

バルコニーに出て、鳥達と戯れるルシアンさんの姿があった。

その表情は昨日とはうってかわって穏やかだった。

(優しい表情……)

ほんのりと温かな気持ちが湧き上がってくるのを感じていると…-。

ルシアン「お前……!」

ルシアンさんが私に気づき、すぐさま表情を強張らせた。

彼の低い声に驚いたのだろうか、鳥達は一斉に飛び立ってしまう。

(あ、鳥達が……)

〇〇「鳥がお好きなんですね」

会話をしようと慌てて言うと、ルシアンさんが困ったように視線を彷徨わせる。

そして……

ルシアン「……懐いているだけだ」

私の方を見ないまま、つぶやくように答えてくれた。

ルシアン「……上がってくるか?」

〇〇「……いいんですか?」

ルシアン「好きにすればいい」

ルシアンさんの視線が、ふいとまたそらされる。

気が変わらないうちにと、私は急いでルシアンさんの部屋へと向かったのだった。

……

〇〇「……失礼します」

ルシアンさんの部屋は物が少なく、昼間だというのに薄暗かった。

(やっぱりここも、なんだか寂しい……)

ルシアン「……」

バルコニーにいるルシアンさんの後姿が、なぜか光に消え入りそうに思えてしまう。

〇〇「ルシアンさ…-」

バルコニーへ出ようとすると、ルシアンさんは人差し指を立てて唇に当て、静かにするようにと無言で私を促した。

ルシアン「……欲張りだな。まだ食べるのか?」

柔らかな声音で、ルシアンさんが小鳥達に問いかける。

軽やかな声を上げた鳥達は、再度ルシアンさんのもとへと群がった。

〇〇「わぁ……」

色とりどりの鳥の群れに感激して、思わず声が漏れる。

するとルシアンさんはこちらを振リ返って……

ルシアン「お前のことは、大丈夫なようだな」

〇〇「え……?」

ルシアン「こいつらは、そんなに人が好きではない」

ほんの少し細められた彼の目には、優しさが灯っている。

〇〇「そうなんですね。嬉しいです」

ルシアン「……餌をやってみるか?」

ルシアンさんが、皮の小袋を私に差し出してくれた。

〇〇「でも……怖がらないでしょうか?」

ルシアン「うるさくしなければ大丈夫だ」

ルシアンさんはそう答えてくれながら、私に手に餌を乗せてくれた。

〇〇「ありがとうございます」

間近にある彼の表情は、とても優しいもので……

(会った時は、怖い人かと思っていたけれど……)

私の胸が、トクンと小さく音を立てた。

ルシアン「そっと餌の乗った手を差し出せば大丈夫だ」

〇〇「……っ!」

言われた通りにすると、鳥達が私の手に群がり始めた。

優しくついばまれる感触に、くすぐったさと愛おしさが込み上げてくる。

〇〇「可愛い……」

ルシアン「あぁ、鳥は羽の色が違えど、皆仲良くできる。 何色であろうとも、鳥は自由だ……」

ルシアンさんの視線が、青い空を希うように大空に向けられる。

〇〇「……」

その横顔が酷く悲しげで……それにとても美しいと、私はそう思った…-。

<<第2話||第4話>>