第5話 どっちが本当?

〇〇「なんだか意外でした」

リカ「何が?」

〇〇「リカさん、城の皆さんにも街の人達にも慕われているようだから」

私の返事を聞いて、いきなりリカさんは吹き出した。

〇〇「あの……」

私に対して、出会った時からずっと不機嫌そうな顔をしていたリカさんが、今は、顔をくしゃりと崩して笑っている。

〇〇「私……何か変なこと言いましたか?」

可笑しそうに笑う彼に、恐る恐るそう尋ねてみると…―。

リカ「ヘンっていうか。ってことはお前、俺が皆から怖がられてるって思ってたんだ?」

(あ……)

〇〇「ごめんなさい! あの、そういう意味じゃなくて」

しどろもどろになって、言い訳を探していると……

リカ「お前も、俺のこと怖いって思ってたわけ?」

〇〇「そんなことは…―」

リカ「じゃ、どう思ってんの?」

不意に、リカさんが真剣な表情になる。

今までの彼を思い出して、私は……

〇〇「楽しそうだなって思います。街にいる時は特に」

リカ「へえ……」

リカさんが、面白そうに目を細めた。

彼はズボンのポケットに手を突っ込んで、街の壁にもたれかかった。
そのまま、しばらく沈黙が流れて……

〇〇「ご、ごめんなさい。私、失礼なことを……?」

リカ「別に?」

リカさんが小さく首を横に振ると、陽に透ける綺麗な髪と一緒に、金色のピアスがシャラリと揺れる。

リカ「けど、お前そういうこと面と向かって言うか? やっぱりヘンな奴」

〇〇「……聞いたのは、リカさんです」

どう返していいかわからず、戸惑ってしまう。

すると彼はそんな私を見て……

リカ「……」

ふっと表情を緩めた。

かすかに、だけど優しく下げられる目尻に、また胸が小さく音を立てた。

(こんな表情……初めて見た)

(リカさんは、本当はどんな人なんだろう?)

掴みどころのない、不思議な王子様……

私はいつの間にか、リカさんの存在が気になって仕方なくなっていた…―。


……

それから……

従者「リカ様、今度の市議会での議題ですが…―」

リカ「ああ、街の者とすでに打ち合わせてる。問題無い」

従者「はっ」

リカ「……」

青年1「またダークの勝ちかよ!」

リカ「ハハッ! お前、ギャンブル向いてねえってこと、いい加減わかった方がいいぜ?」

青年1「くっそ! もう1回だ!!」

リカ「何度でも。その代わり俺が勝ったら、あの店の高級新作チョコレート、全部お前のおごりな」

城でのリカさんと、街でのリカさん……

彼がその表情を変える理由がわからないまま、日が経っていった。

けれど…―。

リカ「おい、○○! ちょっとこれ、食べてみろよ!」

〇〇「わ……少し苦いけど……とってもおいしいですね!」

リカ「だろ? あいつの店の新作だってさ」

リカさんは、私に街で見せるような笑顔を向けてくれるようになっていた…―。

こうして城に滞在し続けている、ある日の夜…―。

夜、なんだか眠れなくて部屋を出ると、廊下でリカさんの姿を見かけた。

リカ「……」

月明かりに照らし出された彼の黄金色の瞳が、不思議な輝きを帯びている。

〇〇「リカさん」

声をかけると、リカさんが眉をひそめて不機嫌そうな顔をする。

(怒ってるわけでは、ないんだよね)

いつしか、私も彼の表情に垣間見える気持ちを、なんとなく察せるようになっていた。

リカ「いつまでもリカさんリカさんって……面倒だ、リカでいい」

〇〇「いいんですか?」

リカ「不満かよ?」

〇〇「そうではないんですけど……」

(リカ……)

声に出さず、胸の中だけで名前を呼んでみる。

少しだけ彼との距離が近づいたようで、嬉しい気持ちが胸に広がった。

リカ「それよりお前、こんな夜中にどうした。眠れないのか?」

〇〇「あ……はい」

リカ「……」

リカは視線を外に移した。

真っ暗闇のなか、どこか遠くからフクロウの鳴き声が響いてくる。

リカ「じゃ、話でもするか?」

リカさんは一瞬だけ考えてから、くすりと笑みをこぼした。

リカ「俺の部屋で」

トクンと、胸が音を立てる。

(こんな時間にお部屋にいってもいいのかな……でも)

(リカさんのことが、知りたい)

〇〇「はい。私も、お話したいと思ってました……お邪魔してもいいですか?」

彼の真剣な眼差しを受けて、そう答えてしまっていた。

リカ「ああ」


……

そして私は、リカの部屋を訪れた。

彼の部屋は物があまりなく、小ざっぱりとした印象だった。

リカ「で、話って? 何か聞きたいことあるんだろ? 特に、俺のこととか」

〇〇「!」

テーブルにあったビターチョコレートをひとかけら手にして、彼は私に笑いかけた…―。

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