第3話 不思議な王子様

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リカ「バカ、こんな街中で俺の名前呼ぶんじゃねーよ」

若者「おい、どうかしたのか、ダーク?」

リカ「ああ、なんか俺のこと、知り合いと間違えたみたい」

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その後…―。

街で賭け事を終えたリカさんに連れられて、私はショコルーテの城へとやってきていた。

街と同じように、城の中も甘い香りに満ちている。

リカ「あー、焦った。お前、驚かせるなよな……ったく」

〇〇「えっと……」

城門へたどり着いた時も、リカさんはきょろきょろと辺りを見回していて、落ち着かない様子だった。

(いったい……どういうことなんだろう)

聞いてみたいと思うものの、リカさんは終始、不機嫌そうで……

聞くに聞けずに首を捻っていると、城の兵士が彼の姿を見て姿勢を正した。

兵士「リカ様、おかえりなさいませ」

リカ「ん、今、戻った。トロイメアの姫を招待した。急ぎ侍女に部屋を用意するよう伝えてくれ」

兵士「トロイメアの……? はっ、かしこまりました!」

兵士さんは私を見て、一瞬驚いたような顔をしたけれど、すぐに深く頭を下げた。

リカ「準備ができるまで、中庭でお茶して待ってるから。急げよ?」

〇〇「あ…―」

リカさんの綺麗な指が、私の手首をぐいと掴む。

彼は兵士の返答を待たずに、私を引っ張るように中庭へ連れ出した…―。

……

中庭には、白いテーブルセットがしつらえられていた。

リカ「悪いな。呼んでおいて準備もできてなくて。 ま、俺が街に行ってて、伝えるの忘れてただけなんだけど」

リカさんは悪びれる様子もなく、無表情で私に言葉を投げかける。

〇〇「あの、さっき『ダーク』さんって、呼ばれてませんでしたか?」

リカ「そんなのどうでもいいだろ、それよりお前も座れよ」

〇〇「……はい」

リカさんは、白塗りのガーデンチェアにどかりと腰を下ろした。

私も促されて、彼から少し距離を離したところに座ると……

〇〇「……っ」

ぐっと間を詰めてきて、リカさんが私の顔を覗き込んだ。

ふわりと甘い香りが、私の鼻をくすぐる。

(この香りは、チョコレートの……)

黄金色の鋭い瞳が、じっと私を見つめている……

(顔が近い……!)

頬にわずかに熱を持ち、膝の上できゅっとスカートを握りしめる。

リカ「俺のこと、知りたいの?」

からかうようなリカさんの視線に、私は……

〇〇「はい……」

私の答えを促すようなその視線に、蚊の鳴くような声でそう答えると……

リカ「……」

リカさんは私に、確かめるような視線を向けている。

切れ長の目が細められる様子に、トクンと胸が緊張に高鳴る。

リカ「へえ……」

〇〇「……」

(こんなにじっと見つめられたら……)

そっと視線を上げて、リカさんと目を合わせる。

(何を……考えているの?)

無表情で私を見つめるその瞳からは、感情をうかがい知ることができない。

〇〇「あの、リカさ…―」

思いきって、彼に問いかけようとしたその時…―。

執事「リカ様、〇〇様のお部屋の準備が整ってございます」

〇〇「……!」

背後から、老齢の執事に声をかけられた。

緊張が解かれたからなのか、一気に肩の力が抜けていく。

リカ「そうか……じゃあ、ゆっくり過ごせよ。俺には決まった予定はないからいつでも付き合ってやる」

〇〇「はい。ありがとうございます」

リカ「じゃあな」

リカさんは私の返事を聞くなり、勢いよく立ち上がってその場から去っていった。

(偽名を名乗っていたり、王子様なのに賭け事をしていたり)

(不思議な人……)

去っていく大きな背中を見て、私はそんなことを考えていた…―。

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