第2話 リカとダーク

市街地には、チョコレートの甘く芳醇な香りがいっぱいに広がっていた。

(街の中まで、おいしそうな香りでいっぱい)

メインストリート脇には、さまざまな種類のチョコレートショップがずらりと並んでいる。

見てるだけでも心が弾んできて、足取りも軽やかに歩いていると……

??「やった、俺の勝ちだ!」

(あれ、この声って……)

聞き覚えのある声が、街角の店から私の耳に届く。

扉から店の中を覗いてみると……

青年「また、お前の一人勝ちかよ!」

??「悪いな」

(やっぱり、リカさん……!)

店内では、リカさんと数人の青年達がカードゲームに興じているようだった。

勝者となったリカさんの前に紙幣が集められている。

(賭け事? 王子様が、こんな街中で……?)

リカ「今日は俺の一人勝ちだな」

この上なく楽しそうに笑うリカさんは、私の姿には全く気づいていない。

〇〇「あの……リカさん?」

リカ「ん?」

私の姿を認めたリカさんの、それまでの楽しそうな表情が一変する。

リカ「な……! お前!!」

〇〇「あ……こんにちは。お城へ向かおうと思っていたんですが…―」

すると、リカさんは慌てて立ち上がってこちらへやってきた。

リカ「な、何でお前がここに…―」

整った顔が、わずかに歪んでいる。

リカ「ああ……俺が呼んだんだっけか……くそ、忘れてた」

前髪をくしゃりと掴みながら、ため息を吐くリカさんに、私は……

〇〇「何をしてるんですか?」

リカ「見りゃわかんだろ。ポーカーだよ」

彼は自分を落ち着かせるように、一つ咳払いをした後……

リカ「バカ、こんな街中で俺の名前呼ぶんじゃねーよ」

後ろの青年達には聞こえないような小さな声で、私に話しかけた。

すると…―。

若者「おい、どうかしたのか、ダーク?」

リカ「!!」

(ダーク? リカさんじゃなくて?)

ダーク、と呼ばれたリカさんは、私を置いてテーブルへと戻る。

リカ「ああ、なんか俺のこと、知り合いと間違えたみたい」

何事もなかったかのように、リカさんは青年達に笑いかけた。

若者「ははっ、そりゃあ、お前なんかと間違えられた男がかわいそうってヤツだ!」

リカ「負けたからって負け惜しみはダセーから」

(……どういうこと?)

リカさんの姿を確かめるように見ていると、私の視線に気づいた彼は……

リカ「あと一勝負で終わる。待ってろ」

〇〇「は、はい」

こちらを振り向いて、本当に小さな声で一言だけ残すと、賭け事を再開した。

リカ「よっし! また俺の勝ちだな」

青年「あーくっそ! 次だ! 次!!」

リカ「何回やったって、一緒だって」

楽しそうな彼らの笑い声が、店内いっぱいに響いていた…―。

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