街灯が灯り始め、石畳を温かな光が彩る…-。
カフェを出て、私達は街を歩いていた。
〇〇「あ、星……」
すれ違った人を見て、思わず足を止める。
スペルヴィア「星?」
隣を歩いていたスペルヴィアさんが、私の視線を追った。
スペルヴィア「ああ、星のモチーフにした帽子ね」
〇〇「はい。さっきのスペルヴィアさんの話を聞いた後なので……」
―――――
スペルヴィア『星を見上げると、たくさんの星が輝いてて……。 気分が落ち込む時だってあるけど、星を見ると心が明るくなる』
―――――
〇〇「星のモチーフをつけて歩いている人を見ると、なんだか明るい気持ちになります」
スペルヴィアさんは私を見つめ、口元を緩める。
スペルヴィア「単純ね。まあ、それがアンタのいいところかしら」
ストールに散りばめられた星、ジーンズにあしらわれた星、耳元に揺れる星…―。
街を行く数々の星を眺めて、スペルヴィアさんが誇らしげに頷く。
スペルヴィア「今回のテーマに合わせた展示会と、販売もしてるの。さっきの帽子も、ワタシのデザイン」
〇〇「そうだったんですか?」
スペルヴィアさんは自慢げに顎を上げてみせる。
けれど、すぐにため息を吐いた。
スペルヴィア「ヤダ、アンタのせいで宿題が残ってたこと思い出したわ」
〇〇「宿題……?」
―――――
スペルヴィア『んー……何か足りないのよね……』
―――――
スペルヴィアさんがモデルさん達の衣装に頭を悩ませていたことを思い出す。
スペルヴィア「ちょっと服見ながら考えたいし、店に顔出すわ。アンタも来る?」
先ほど見た星のモチーフの帽子やアクセサリーを思い出すと、心が躍る。
〇〇「はい。せっかくですし、私も何か買いたいです」
スペルヴィア「買わなくたって、アンタならワタシがプレゼントするけど」
〇〇「え、でも……」
申し訳なさに言い淀むと、スペルヴィアさんがからりと笑った。
スペルヴィア「いいの。ワタシが招待したんだから、気持ちよく受け取りなさい」
〇〇「……じゃあ、ありがとうございます」
スペルヴィア「アンタに一番似合うやつ、選んであげる」
にっこり微笑まれ、私は……
〇〇「じゃあ是非、お任せしたいです」
スペルヴィア「腕が鳴るわね。アンタの肌と今の髪の長さに合うとしたら…-」
私を上から下までじっくりと見てから、スペルヴィアさんは口をつぐんだ。
スペルヴィア「いや……」
〇〇「スペルヴィアさん?」
スペルヴィア「やっぱり、自分で選びなさい」
〇〇「え……?」
スペルヴィアさんはおもむろに、道行く人に視線を移した。
スペルヴィア「ワタシが選ぶのが一番センス良くまとまるのは間違いないけど、それじゃ面白くないわよね」
〇〇「……」
人々は皆それぞれのおしゃれを楽しみ、夕闇迫る街に彩りを添えている。
スペルヴィア「決めた」
スペルヴィアさんの声が弾む。
スペルヴィア「モデル本人にも、一着ずつ服を選ばせるわ! テーマは星で、あとは自由。楽しそうじゃない?」
スペルヴィアさんは、満面の笑みで私に振り向く。
その生き生きとした表情に、私の心も弾むのだった…-。