明るいおしゃべりの声と、コーヒーの香りが私達を包み込む…-。
私とスペルヴィアさんはカフェに入り、コーヒーとデザートを楽しんでいた。
〇〇「そのコート、素敵ですね。星の飾りも珍しいし……」
スペルヴィア「そうなの、そこが気に入ってて。 今回のショーのテーマも、『星空』だしね」
(星空……?)
スペルヴィア「星のモチーフがいろんな形で衣装にまぎれていたり、シックな中にきらりと輝くものがあったり……。 きっとアンタも気に入るわよ」
〇〇「楽しみです。でも、どうして星空なんですか?」
スペルヴィア「……」
スペルヴィアさんはコーヒーを一口飲んでから、視線を上げた。
スペルヴィア「美しい星空を見た時、アンタなら何を思う?」
スペルヴィアさんの言葉に、私は……
〇〇「綺麗だなって、癒されます」
スペルヴィア「わかる。穏やかな気持ちになるわよね」
スペルヴィアさんは私の答えに、納得したように微笑んだ。
スペルヴィア「ワタシ、星が好きなの。 罪過の国って、曇っている日が多くてあんまり星が見えないから。 だから、たまに他の国に来ると、嬉しくなる。 空を見上げると、たくさんの星が輝いてて……」
スペルヴィアさんはまるでそこに星空があるかのように、天井を仰いだ。
スペルヴィア「気分が落ち込むことだってあるけど、星を見ると心が明るくなる」
優しく目が細められて……
その眼差しがゆっくりと下り、私に留まった。
スペルヴィア「今回のファッションショーで、皆がそういう気持ちになれたら素敵だと思わない?」
小首を傾げるスペルヴィアさんがとてもまぶしくて…-。
私は素直に頷いていた。
スペルヴィア「そういうのもあって、本職のモデルだけじゃなくて、王子もモデルとして呼んでるの。 王子って、夢や希望を与えられる存在であってほしいじゃない。 晴天の夜に輝く星みたいに、皆の目に映ればいいなって…-。」
(スペルヴィアさん、そんなことまで考えて……)
傲慢な官吏らしい普段の彼とは違う言葉に思わず目を見開くと……
それに気づいたスペルヴィアさんが、ふっと笑って肩をすくめる。
スペルヴィア「ま、今のは後づけの理由。ワタシはただ、どんよりしたのが嫌いってだけなの」
声を弾ませたスペルヴィアさんは、小さなスプーンでシャーベットをすくった。
(もしかして、照れ隠し……?)
スペルヴィア「で、アンタはどんな服が好き?」
すぐに話題を変えたスペルヴィアさんだったけれど……
彼の心に少しでも触れられた気がして、私の胸はほんのりと温かくなった…-。