街から宮殿に戻った後・・・・ー。
ソファに静かに腰を下したセフィルさんが、静かに口をひらく。
セフィル「かばっていただき、どうお礼を申し上げれば良いのか。それに、情けないところを見られてしまいました」
〇〇「いえ、そんな・・・・」
セフィルさんの気持ちを持ち上げたくて、言葉を探す。
〇〇「セフィルさんは、国民の方々にとても愛されているんですね」
そう笑いかけると、セフィルさんの表情が曇る。
セフィル「・・・・愛されているのは、私の仮面です」
〇〇「えっ?」
セフィル「王位継承者としてふさわしく振る舞うよう、幼い頃から自分を律してきました。 でも私は・・・・罪人なのです。 王家の者として振る舞えば振る舞うほど、皆を騙しているような気持ちになる」
(騙している・・・・?)
〇〇「どういう・・・・ことですか?」
思わず尋ねると、セフィルさんは瞳を閉じた。
セフィル「あなたも、天の国と地の国との関係はご存じかと思います」
〇〇「はい・・・・昔から対立していて、ずっと国交がなかったと」
セフィル「・・・・幼い頃の話です。 国交が途絶えていた中、偶然、地の国の王子と出会いました。 お互いに家出をしていた時に出会って、私達は身分を知らずに友達になったのです。 身分を気にせず、はじめて喧嘩もした・・・・あれほどに楽しかった日はありません。 城に連れ戻されてからも、彼のことは忘れなかった。 そうして、半年後、再会することができた。 ちょうど今この時のように・・・・ずっと途絶えていた国交復活祭の場での出来事でした。 私達は、走り寄った・・・・敵対する国の王子同士という立場に気がつかずに。 そして・・・・それを止めようとした彼の乳兄弟が、不敬罪で殺された・・・・」
〇〇「殺・・・・された? どうして・・・・」
唇が、だんだんと渇いていく。
セフィル「臣下が、主の行動を阻んだという理由です。 国交復活と謳っても、事実上は冷戦状態。そんな中、王子同士が勝手に手を取り合ったらどうなるか。 そのことを、あの子どもはよくわかっていたんだ・・・・。 それをきっかけに、天と地の仲はまた悪化して・・・・。 今年まで、国交復活祭は14年間執り行われませんでした。 この状況は・・・・天と地の冷戦が、こんなに長く続いているのは・・・・私のせいなのです!」
〇〇「そんな・・・・!」
セフィル
「国民にも後ろめたくて・・・・それを隠したくて、彼らの前で立派な王子を演じ続けてきました。 貴女をダンスにお誘いしたのも。 夢王族である貴女が国交復活祭で踊ってくだされば。 天と地の和平の堅きことを印象づけられると言いましたが。 本当は・・・・一刻も早く、地の国との関係を修復することで。 国を平和にすることで、自分自身が許されたい・・・・その一心だったのです・・・・」
〇〇「・・・・」
セフィル
「優しい言葉で飾っておいて、あなたの足に怪我までさせて・・・・。 軽蔑なさいましたか?」
(そんな訳、ない・・・・!)
〇〇「そんなことないです」
雪より白いセフィルさんの手をそっと握ると、その目が驚いたように見開かれる。
〇〇「私、出ます・・・・ダンスパーティー」