美しく晴れた翌日・・・・ー。
セフィル「そういえば・・・・」
アフタヌーンティーの最中、セフィルさんが思い出したように口を開いた。
セフィル「地の国との国交復活祭の前夜に、ダンスパーティーが開かれるのですが。 そこで一緒に踊っていただけないでしょうか」
〇〇「えっ、あの私、ダンスは・・・・」
突然の言葉に、私は戸惑いを隠せない。
セフィル「あまりご経験がない・・・・と?」
〇〇「はい・・・・お恥ずかしいのですが」
セフィル「よろしければ私がお手伝いします」
そんな私に優しく微笑みかけて、セフィルさんはティーカップを置く。
セフィル「ダンスは得意なのです。いい講師になれると思いますよ。 ダンスパーティーで踊られるかは、レッスンの成果を見てから決められては?」
(上手に踊れるか、わからないけど)
〇〇「よろしくお願いします」
セフィル「こちらこそ。〇〇様」
セフィルさんは、嬉しそうに微笑んだ。
そうして私は、ダンスのレッスンを受けることになった。
夕方・・・・ー。
(ダンスって、こんなに細いヒールで踊るんだ)
早速ダンスを教えてもらうことになった私は、セフィルさんが用意してくれた美しいハイヒールを履いている。
セフィル「背筋を伸ばして」
斜めに差し込む夕陽が、ダンスホールの床を暖かな色に染める。
セフィル「失礼。 これが基本姿勢です」
腰にセフィルさんの手が回されて、私の胸が微かに跳ねた。
セフィル「では、ワルツを」
弦楽隊が演奏をはじめて、セフィルさんの腕に支えられながら、
私はぎこちなくステップを踏みはじめた。
セフィル「お上手ですよ」
優雅な微笑みに思わず笑みを返すと・・・・ー。
〇〇「あ・・・・っ」
慣れないヒールが脱げかけて、私は足を滑らせてしまう。
セフィル「お怪我はございませんか?」
セフィルさんの腕に抱き寄せられて、私は耳元で彼の声を聞いた。
(ち、近い・・・・)
戸惑いに瞳を瞬かせていると、
セフィルさんが私をふわりと抱き上げる。
セフィル「靴擦れができてしまっていますね・・・・」
椅子に私を座らせて、セフィルさんが私の足元に跪く。
セフィル「気付かず申し訳ありません・・・・〇〇様」
セフィルさんはヒールを脱がせると、擦り傷ができた私の足にそっと口づけを落とした。
〇〇「・・・・!」
(なんだか・・・・)
(セフィルさんって、物語の中から出てきた王子様みたい)
高貴なお姫様のように接してくれるセフィルさんに、頬が染まっていくことを感じる。
〇〇「で・・・・でも、ダンス初心者の私が踊るなんて、いいのでしょうか。 大切な式典なのに・・・・」
セフィル「・・・・」
そう言うと、セフィルさんが表情を少し固くしたような気がした。
〇〇「・・・・セフィルさん?」
セフィル「あ、いえ・・・・失礼いたしました。 今度の国交復活祭は、14年ぶりに執り行われる大事な式典・・・・。 だからこそ、○○様に踊っていただきたいのです。 夢王族であるあなたに踊っていただければ、平和の象徴となり、皆も一層喜ぶことでしょう」
〇〇「そんな大役・・・・」
セフィル「大丈夫です。ダンスパーティーはいわば前夜祭のようなもの。 私がしっかりとリードいたしますので、○○様はただダンスを楽しんでいただければ」
〇〇「・・・・」
セフィル「無理にとは申しません。あなたのお心で決めてください」
(セフィルさん・・・・)
(どうしてだろう)
私に向けられるセフィルさんの微笑みは、とても優雅で優しいのに・・・・
それがどこか、張り付いたもののように感じられた・・・・ー。