第3話 目まぐるしい採寸

翌日……

婚宴の儀で演目を披露することになった私は、その準備に追われていた。

クラウン「やあ、おはよう! かわいい私のパートナー」

クラウンさんは私の手を取ると、軽妙な仕草で優しく手の甲にキスをした。

〇〇「お……おはよう、ございます」

頬を染める私には構わず、クラウンさんはそのまま私の手を取る。

クラウン「今日はやることが山積みだよ。さあ、こっちへおいで」

クラウンさんは笑顔でそう言うと、私を城の一室へと案内してくれた。

中に入ると…-。

〇〇「こ、これは……」

クラウン「こちらは、カルナバーラ王室の衣装デザイナーとお針子達」

(デザイナーとお針子って……?)

たくさんの人達に迎えられ、きょろきょろ周りを見回しながらゆっくりと中へ進む。

衣装デザイナー「クラウン様のシナリオ、拝見いたしました。姫様の衣装、腕によりをかけて作らせていただきます」

一人がそう挨拶をすると、それが始まりの合図かのように、そこにいた人達がいっせいに私を取り囲む。

(い、いったい、何がどうなってるの?)

状況が理解できないままの私を置いて、そこにいる全員が慌しく動き始める。

〇〇「……」

突然の出来事に瞳をまばたかせていると…―。

クラウン「〇〇の体を採寸しているのさ。ぴったりのドレスを作るためにね」

クラウンさんはそう言って、私にウインクをした。

衣装デザイナー「さあ皆、1ミリのずれも許されないよ。しっかりと測るように」

お針子「はい!」

お針子さん達は、体の隅々まで細かくサイズを測っていく。

されるがままになっていると、あっという間に採寸が終わり、皆が部屋を後にした。

クラウン「〇〇、大丈夫かい?」

ぼーっと立ち尽くす私を見て、クラウンさんが心配そうに顔を覗き込む。

〇〇「あ…-」

そこでやっと、部屋には私とクラウンさんしかいなくなったことに気がついた。

〇〇「一瞬の出来事で、何がなんだか……」

クラウン「驚かせてしまったようだね。でも、きっとストーリーに合った、美しいドレスを届けてくれるよ。 貴女と私の、最高のストーリー」

混乱している私を見て、クラウンさんが優しく声をかけてくれる。

クラウン「台本はもう読んだ?」

〇〇「読みました。でも……。 なんだか、不安で……」

クラウン「緊張しているんだね。大丈夫、私にすべて任せておいて」

クラウンさんの優しい言葉が胸に響く。

クラウン「私は、楽しみで仕方ないんだ。 美しいドレスを身にまとった〇〇と、演目を披露することが、ね」

〇〇「クラウンさんの足手まといにならないといいんですが……」

初めての経験ということもあり、つい弱気なことばかり口走ってしまう。

〇〇「あ……ごめんなさい。やるって決めたのは、私なのに」

クラウンさんの手が、私の頬にそっと触れた。

クラウン「少し強引に貴女を誘ってしまったかもしれない」

〇〇「そんな…-」

クラウン「でも……」

私の頬が、彼の手に優しく撫でられる。

クラウン「すまないね、どうしても貴女とやってみたいんだ」

〇〇「クラウンさん……」

クラウン「失敗を恐れないで、何度も練習をすれば自信がつく。まだ時間はたっぷりあるから」

クラウンさんの笑顔が、曇った私の心に光を運んでくれる。

(頑張ろう)

(クラウンさんと、最高の演目を……)

ぎゅっと手のひらを握りしめて、私は彼に笑顔を返した…-。

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