第5話 二人きりの観覧車

観覧車が、私達を乗せて空を上っていく…-。

アヴィが興味深そうに、少しずつ離れていく地上を見下ろしていた。

アヴィ「……」

陽の光が、彼の赤い髪を燃えるように鮮やかに色づかせている。

その髪が、端正な彼の顔をより一層美しく際立たせていた。

(綺麗……)

アヴィの横顔から目が離せなくて、つい見つめていると…-。

アヴィ「……なんだよ」

視線を感じてか、不意にアヴィが私の方を振り返った。

〇〇「あ……ごめん、なんでもない」

思わず視線を逸らすけれど、胸の高鳴りは収まらないままで……

アヴィ「……なんか、変な感じだよな」

〇〇「え?」

アヴィ「いや。ずっと慌ただしかったから……こんなにゆっくりできるの、不思議だなって」

アヴィがふと表情を和らげて、微笑む。

〇〇「……そうだね」

アヴィ「少しは息抜きできたか?」

〇〇「うん……」

優しい眼差しに見つめられ、私は…-。

〇〇「アヴィのおかげだよ」

アヴィ「俺は何もしてないだろ?」

〇〇「でも、一緒に回ってくれたでしょ? アヴィは?」

アヴィ「俺?」

アヴィは今までそんなことを考えたこともなかったのか、わずかに首を傾げる。

〇〇「うん。旅の途中、アヴィはずっと気を張ってるように見えるから……」

アヴィ「そりゃそうだろ。なんたって、お前の危なっかしさは一級品だからな」

からかうように笑われて、恥ずかしくて顔が熱くなっていく。

〇〇「……ごめんね」

アヴィ「いいさ、頼れる仲間も増えたしな。 お前も、最初よりはしっかりしたと思うし」

〇〇「っ……!」

(突然褒めるのは、ずるい……)

さっきとは違う恥ずかしさで、もっと顔が熱くなる。

アヴィ「そろそろ天辺だ」

眼下に広がる賑やかな会場が、随分遠くに見える。

〇〇「まるで、私達二人だけ別のところに来たみたい……」

アヴィ「さっきの星の中みたいだな……」

〇〇「うん……」

(あの時も、二人だけで空を飛んでいるみたいだった……)

アヴィ「〇〇……」

不意に名前を呼ばれて、アヴィの方を振り返った。

肩に手を置かれ、心地よい重みを感じる。

〇〇「アヴィ……?」

真剣な眼差しが向けられて、私は何も言えずに、ただ見つめ返すことしかできなくて……

寄せられる唇から、熱い吐息が私の肌に触れた。

〇〇「……」

思わず目を閉じて、私は彼の口づけを待った。

けれど……

アヴィ「……」

何も触れないまま、目の前を覆っていた影がすっと離れていく。

(アヴィ……?)

恐る恐る目を開けると……

アヴィは私から顔を逸らし、窓の方を向いていた。

顔が赤くなって見えるのは、陽のせいなのか……

アヴィ「……悪い」

ぽつりとつぶやかれた言葉が、気まずい空気の中に消えていった…-。

<<第4話||月覚醒へ>>