第3話 騎士の国の王子

星の国のパビリオンを出た私達は、次に武器の国のパビリオンへと向かうことにした。

ホールには、大小さまざまな武器が整然と並べられていた。

アヴィ「武器の国らしくて、勇ましいな」

武器を見るアヴィの瞳が、きらきらと輝いている。

その横顔を眺めながら、私はふと先ほどの占い師さんの言葉を思い出す。

―――――

占い師『星達が教えてくれておるぞ……『自分を偽ることなかれ』、と』

―――――

(あれは、どういう意味だったんだろう)

けれど、アヴィ自身はまるで気にしていないのか……

アヴィ「見ろよ、この剣。俺のとどっちが大きいかな? こんな剣振り回す奴と、一度手合わせしてみたいな」

アヴィはまばたきも忘れて食い入るように、飾られた大剣を見つめている。

(まるで、子どもみたい)

笑みが漏れそうになり、私は慌てて口に手を添えた。

アヴィ「そうだ、手合わせって言ったら、ユリウスって奴がいてさ…-」

少し興奮したように話す姿が珍しくて、私まで嬉しくなり、彼の言葉に耳を傾ける。

けれど…-。

アヴィ「それでさ、ユリウスと約束してんだ。次会った時はお互いの武器を交換…-。 あ……悪い、お前は武器なんて興味ねえか」

アヴィが気恥ずかしそうに、顔を逸らす。

〇〇「ううん。もっと聞きたいって思ってたよ」

アヴィ「そうか? ならいいけど」

その時…-。

建物の奥の方から、わっと歓声が上がった。

〇〇「なんだろう……?」

不思議に思いながら、私達は奥へと向かった。

……

ホールの奥は開けた場所になっていて、そこで二人の男の人が剣を構えて対峙していた。

アヴィ「へえ……模擬試合か」

観客の間から身を乗り出し、アヴィが興味深そうに試合の行方をうかがう。

アヴィの腕はウズウズと動き出したくて堪らなさそうに揺れていた。

司会者「おーーっと、アヴァロンの近衛兵・カルアが10人抜き! さあ、この剣を使った勝負! 挑戦者は他にいませんか!?」

司会者さんは大剣を手に、辺りを埋め尽くす観客をぐるりと見渡す。

アヴィ「……行ってきていいか?」

我慢しきれなかったのか、アヴィが少し申し訳なさそうに私に確認を取る。

〇〇「もちろんだよ。でも……気をつけてね」

つい心配で言ってしまった私の頭に、アヴィが優しく手を乗せた。

アヴィ「負けねえよ」

撫でるように、私の頭からゆっくり手を離すと、アヴィが力強く手を上げた。

アヴィ「俺が挑戦しよう」

司会者「おっと! 挑戦者が現れました!」

観客は自然と、アヴィがステージに向かうまでの道をあける。

その間を悠然と歩いていって、アヴィは司会者さんから剣を受け取った。

落ち着いた様子で一度剣を振ると、カルアさんに向け構え直す。

司会者「それでは……始め!」

開始の合図と同時に、カルアさんが大剣を振り被り、アヴィに襲いかかる。

カルアさんはアヴィの眼前まで一気に詰め寄ると、剣を振り下ろそうとした。

アヴィ「遅い!」

言うやいなや、アヴィは剣を横になぎ払う。

まばたきのような一瞬の剣さばきに、会場がしんと静まり返った。

カルア「う……」

カルアさんがわき腹を押さえ、うずくまる。

アヴィ「慣れない剣だと、こんなもんか」

アヴィが剣を軽々と肩に担ぐと、割れんばかりの歓声が場内を包み込んだ。

司会者「な、なんと! カルアが敗れた~! 勝者は! ええと……」

アヴィ「ああ。 アルストリアのアヴィだ」

観客1「アルストリアってあの?」

観客2「じゃあ、もしかしてあの人は……。 アヴィ様だ! お強いはずだ!」

騒ぎ始めた観客の口から漏れ聞こえるのは、アヴィを讃える言葉ばかりで……

(すごい……アヴィって、こんなに有名なんだ)

歓声を背に浴びながら、アヴィが息を弾ませ私のところへ戻って来る。

アヴィ「悪い。待たせたな」

〇〇「すごいね、アヴィ……」

アヴィ「いつもの剣だったら、もっと速く振れたんだけどな」

周りの歓声とは違って、アヴィが少し物足りなさそうにつぶやく。

まださっきの雄姿が忘れられず、アヴィを見つめていると…-。

アヴィ「なんだよ、その顔。言ったろ? 負けねえって。 ……背負ってるもんが、あるからな」

アヴィは表情を引きしめ、まっすぐに私を見つめる。

その真剣な眼差しに、私の胸は甘く焦がれるように締めつけられた…-。

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