凪の月…―。
穏やかな波の音が夕焼けの中を流れるある日…―。
私は、オリオン王子に招かれ海底国を訪れることになっていた。
(どうやって海の底へ行くんだろう?)
待ち合わせ場所の洞窟の中には、底の見えないこわいほど透明な海が広がっている。
(綺麗だけど、なんだか少し怖い)
心細さを抱えて洞窟の中を覗き込むと、オリオンさんが待っていた。
オリオン「久しぶりだな」
〇〇「オリオンさん」
オリオン「迷わなかったか?」
〇〇「はい。迎えにきてくださってありがとうございます」
オリオン「お前、俺についてくるか?」
唐突に尋ねられて、私は首をかしげる。
(ついていくって?海底国に行く方法は知らないけど)
〇〇「……はい」
私の返事に満足げな笑みを返して、オリオンさんは私の腰元を強く引き寄せた。
(え?)
オリオンさんの長いまつ毛が、私の額に触れそうなほど近づいてくる。
〇〇「オリオンさ……っ…ん……っ」
気がついた時には……
目を閉じる間もなく、キスをされていた。
〇〇「な、何するんですか!」
その言葉には構わず、オリオンさんは突然私を横抱きにして、洞窟の中の海へと飛び込んだ。
(息が……っ)
オリオンさんは、どんどんと深みへと泳いでいく。
(もう駄目……)
耐えきれずに息を吐くと……
〇〇「あれ?」
(息が、できる!?)
オリオン「俺の国ははるか海底にある。 海底で息が出来るよう、
力を与えてやったんだ。 ありがたく思え」
(キ、キスで、息ができるようになったってこと?)
地上から降り注ぐ夕陽がオリオンさんの背後から降り注ぎ、その美しさに、私は思わず目を細める。
〇〇「なんて、きれい……」
思わずこぼれ出た言葉に、オリオンさんが満足そうに微笑んだ…―。