第2話 レジデントショーへ

ダグラス「そうか。なら、寂しさに震えるかわいい姫君を、この俺にどうかエスコートさせてくれないか?」

ダグラスさんはそう深い声で耳元に囁いて、私の体を抱き寄せた。

〇〇「エスコート……ですか?」

ダグラス「ああ、いろいろ行事続きで〇〇も疲れただろう? そんな君に、『おもてなし』ってやつをさせて欲しくて」

〇〇「そんな……悪いです。ダグラスさんだってきっとお疲れのはずなのに」

ダグラスさんは微笑を浮かべ、瞳を少し悪戯っぽく輝かせた。

ダグラス「おや、忘れたかい? 俺はアンキュラの海賊だ。そんな柔な男じゃない。それとも…-」

〇〇「あ……っ」

所々に傷のある逞しい指先が、私の顎を取った。

ダグラス「俺と過ごすのは……嫌かな?」

〇〇「ダグラスさん……」

彼の瞳の中に情熱的な夏の陽射しを見て、少しだけくらくらする。

〇〇「そんなことないです! ご迷惑でなければご一緒させてください」

思わず即答してしまうと、再び彼の唇が弧を描いた。

ダグラス「そうそう、いい女ってのはそうじゃないとね。 俺も〇〇に素直に甘えられた方が嬉しいな。 じゃあ、一緒に行こう」

〇〇「はい……あっ」

その瞬間、ダグラスさんの大きな手のひらが、私の頭を優しく撫でた。

(ドキドキしてしまう……)

浅黒い胸元に抱かれたまま、ほんのりと潮の香りがするようで、胸の高鳴りがひとりで育っていく。

ダグラス「ひとまず、劇場にでも行こうか?」

(劇場?)

不思議に思うまま彼にエスコートされて行き着いた先には…-。

〇〇「すごい……ホテルの中にこんなに立派な劇場が?」

驚きながら辺りを見回している私に向かって、ダグラスさんはくすりと笑う。

ダグラス「ここは道化の国のサーカス団のレジデントショーが見られるんだ」

〇〇「レジデント……?」

ダグラス「ああ。レジデントショーってのは……常設公演のこと。 このホテルは道化の国のサーカス団の公演が常に行われているんだ、このポスターを見てごらん」

彼の指先を視線で追うと、大きなパネルにはめ込まれたポスターが目に入った。

〇〇「素敵……!」

そこに描かれていたのは、散りばめられた光の中に浮かぶ、カラフルな奇術師達……

サーカスは夢の中にでも迷い込んだような幻想的な雰囲気だった。

ダグラス「いいだろう? 道化の国は年中カーニバルが開かれている楽しい国だ。 そんな国のサーカス団が、一流でないわけがないだろう? せっかくだから、二人で楽しもう」

〇〇「はい……!」

(ダグラスさんと、サーカスが見られるなんて)

思いもよらない展開に胸を弾ませていた私の横で、彼がふっと表情を緩めた。

ダグラス「実は、このサーカス団の曲芸師に、昔の仲間がいるんだ。 もうしばらく会っちゃいないが、そいつの活躍を君と一緒に楽しみたい。 レコルドなんて滅多にくる国じゃないからね」

〇〇「はい。どんなショーが見られるのか、楽しみです」

これから始まる特別な時間を想像すると、心臓がドキドキと音を立て始めるのだった…-。

<<第1話||第3話>>