第5話 その瞳に釘付け

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ダグラス『そうだな。今日は海賊稼業は休みにして、王子として君を存分にエスコートしよう。 存分に……ね』

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その後ダグラスさんに連れてきてもらったのは、賑やかなレストランバーだった。

お客さん達の楽しそうな会話と、テンポのいい音楽が聴こえてきて、とても居心地がいい。

〇〇「この料理、すごくおいしいですね」

いつの間にかすっかり緊張も解け、私は料理とダグラスさんとの会話に夢中になっていた。

ダグラス「よかったよ、喜んでくれて。君はこういう雰囲気のがいいのかな?」

〇〇「劇場のあるあのホテルも素敵でしたけど、やっぱり少し緊張します」

ダグラス「そうか」

まるで小さな子供をあやすような笑顔を向けられると、なんだか少し恥ずかしくなる。

〇〇「やっぱり……おかしいでしょうか?」

控えめに問いかけると、賑やかなホールにダグラスさんの笑い声が響いた。

ダグラス「そんなことないさ。〇〇がリラックスできるのが一番だからね。 こうやって美味しい食事と弾む会話を楽しめるってのは何よりの幸運だ」

〇〇「ダグラスさんも今日、楽しんでますか?」

ダグラス「もちろん。飛び入りであんな立派なショーにも参加できたしね」

彼はナイフ投げの要領を真似て、フォークを手にスナップを利かす。

その無駄のない動きに、私は劇場でのことを思い出した。

〇〇「あの時のダグラスさん……すごく格好よかったです」

すると、私を見守っていたダグラスさんの目が意外そうに見開かれる。

ダグラス「君は怖くなかったのかい? 成功したから楽しかったって言えるけど、ステージの上じゃ、失敗したらと思うとヒヤヒヤしてたよ」

〇〇「もちろん、少しは……怖かったです。 でもダグラスさんなら大丈夫って思えて」

ダグラス「嬉しいこと言ってくれるね」

握っていたフォークを置き、ダグラスさんが頬杖をつく。

ダグラス「……これまでにないくらい、集中したよ。 君に怪我をさせるわけにもいかないし、ショーだって台無しになってしまう」

彼は渋い顔をすると、ほっと息を吐き出して苦笑する。

(そんなふうに見えなかったけど、緊張してたんだ……)

〇〇「あのピエロさん、師匠って言ってましたね」

ダグラス「ああ、昔まだアイツが海賊をやってた頃、ナイフを教えたのは俺だ。 けどショーでしか投げてないやつと、獲物を仕留めるのに投げてる俺じゃ大違いだろう?」

〇〇「……っ!」

挑戦的な笑みを見て、今さらながらに背中に冷たい汗を感じる。

ダグラス「おっと、少し怖がらせたかな?ごめん」

〇〇「いえ、大丈夫です。だって大成功でしたから……」

ダグラス「……ありがとう。俺を信用してくれて」

彼の柔らかな瞳が、レストランバーの間接照明に幻想的に照らされた。

その大人っぽい目元に私の瞳はいともたやすく釘づけとなる。

ダグラス「君には敵わないな……」

伸ばされた指の背がゆっくりと私の頬の稜線をなぞった。

〇〇「ダグラスさん……?」

ダグラス「ああ、もっと俺の名前を呼んでくれ。君の声は耳に心地いい」

静かな波の音を楽しむかのように、ダグラスさんは心地よさそうに瞳を閉じた。

彼はそのままじっと私を見つめ、そっと指を引っ込めた。

ダグラス「俺のおもてなしはまだ終わりじゃないよ」

〇〇「え……?」

ダグラス「まだ、時間はたっぷりあるからね……」

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