第4話 稼業を休んで

太陽が傾きかけた空は、美しい茜色に染まり始めていた。

ダグラス「次は〇〇が落ち着ける場所にしよう」

〇〇「大丈夫です、そんなに気を使っていただ…-」

ダグラス「いいや、俺が疲れてきたんだ。 君との贅沢な時間を過ごせるなら、もっと羽を伸ばせる場所がいい」

ダグラスさんはそう言って、悪戯っぽく片目をつむる。

(私のこと、気遣ってくれてるんだろうな)

ダグラスさんの優しさが私の胸をいっぱいにして……そっと彼の傍に寄り添った。

二人で歩く夕暮れの街は、たくさんの人々で賑わっていた。

ダグラス「……おっと、俺から離れないで。迷子になっちゃ困るからな」

〇〇「……! はい」

彼の胸元に抱き寄せられ、人通りの多い街並みを歩く。

〇〇「パーティは終わったけど……まだ人が残っているんでしょうか?」

ダグラス「そうだな。でも、宴の余韻があるってのは風情だな。 俺は賑やかなところは好きだけど、〇〇は?」

〇〇「はい、私も楽しくなるから好きです」

ダグラス「〇〇は素直でいい子だね」

ふっと、精悍な顔に穏やかな笑みが浮かぶ。

〇〇「あ、そういえば…-」

緊張が解けた私はダグラスさんの姿に、一つあることを思い出した。

〇〇「今日はボニータはお留守番なんですか?」

ボニータというのは、彼が普段連れ歩いていた小さなペットのサルのことだ。

ダグラス「ああ、さすがにここまで連れてくるわけにはいかないからね。 まあ置いてくって伝えたら彼女もご機嫌斜めだったから、後でお土産を買ってあげないと」

〇〇「なら一緒に選びましょうか?」

ちょうど大通り沿いには素敵な雑貨屋がところ狭しと並んでいる。

ダグラス「本当かい、そいつはありがたい。じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおう。 ……っと、その前にまずはあそこのレストランに入ろうか?」

ダグラスさんはすっと優雅な所作で私に向かって手を差し出す。

(海賊って言ってもこういうところはちゃんと王子様なんだ……)

ダグラス「どうしたんだい?」

〇〇「あ、ごめんなさい」

ダグラス「……当ててみせようか? 今、俺のこと、ちゃんと王子なんだなって思ったんだろう?」

心をそのまま読まれたようで、頬が急速に熱を帯びていく。

〇〇「恥ずかしいです……私そんなに顔に出やすいですか?」

ダグラス「ああ、初めて海で出会った頃から変わらない。 その素直さが俺には海上の陽射しのようでまぶしいね」

静かに笑って、そのまま目を伏せたかと思ったら……

〇〇「あ……っ」

私の手の甲に、小さな口づけが落とされた。

力強い視線が私をまっすぐに見つめ、胸がにわかに騒ぎ出す。

ダグラス「そうだな。今日は海賊稼業は休みにして、王子として君を存分にエスコートしよう。 存分に……ね」

含みのある声が、甘く深く私の耳に響いたのだった…-。

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