第3話 ナイフショー

まばゆいスポットライトが、ステージを幻想的に照らし出している…-。

そこに視線を送りながら、ダグラスさんの案内で劇場の中央に設けられたバルコニー席に腰を下ろした。

ダグラス「楽しみだな。いったいどんなショーを見せてくれるのか……。 〇〇も楽しみだろう?」

〇〇「はい、ドキドキします」

ダグラス「それはよかった。そろそろ始まるかな……?」

ダグラスさんがそう言った時、ぱっと客電が落ちた。

慌ててステージを見ると、いつの間にかそこに一人のピエロが立っていた。

ダグラス「へえ……」

こうして、華やかで幻想的なステージが幕を開けたのだった。

……

芝居仕立てのショーが始まってしばらくした頃…-。

スポットライトの中央で青い衣装に身を包んだピエロが、ナイフ投げを披露した。

ダグラス「……」

ダグラスさんは、そのピエロをずっと目で追っている。

(もしかしてこのピエロが、ダグラスさんの昔馴染みの方?)

そんなことを思っていると、不意にピエロがマイクを取った。

ナイフ投げのピエロ「それではここで特別なお客様のご招待といきましょう。 実は本日、この私のナイフの師匠が見に来てくださっているのです」

その瞬間、スポットライトの光がダグラスさんに向けられた。

会場のざわめきがダグラスさんの髪を揺らし、立ち上がった彼に集中する。

ナイフ投げのピエロ「ぜひ今日は、師匠のお手並みを皆様に」

ダグラス「……これは参ったな」

ナイフ投げのピエロ「さあそちらのプリンセスもステージのパートナーとしてぜひ」

〇〇「え?」

(私が、ダグラスさんのパートナー!?)

ダグラス「おい! それはさすがに……」

観客席からどっと拍手が沸き起こりあっという間にステージへと駆り出されてしまった。

(どうしよう。つい出てきてしまったけれど……)

ダグラス「……〇〇、大丈夫か?」

〇〇「ダグラスさんが一緒なら大丈夫です」

ダグラス「しかし……」

精悍な彼の唇が、微かにしかめられる。

ナイフ投げのピエロ「それでは海賊の国のダグラス王子によるナイフショーの始まりですっ!! さあ、プリンセスはこちらの的へ」

(えっ!?)

ピエロに手を引かれて的の前に立たされてようやく気づく。

ダグラス「おい……!」

(パートナーって、そういうこと……!?)

ナイフ投げのピエロ「はい。少しご協力をお願いします。その方が盛り上がりますので」

ダグラス「……」

ダグラスさんの鋭い視線がピエロに向けられる。

ダグラス「今回ばかりは駄目だ。その子を巻き込むんじゃない」

ナイフ投げのピエロ「おや、女にうつつを抜かして腕が鈍りましたか? これでは会場も興ざめです」

〇〇「!」

化粧の施された顔で、ピエロはニヤリと挑戦的な笑みを作る。

(ステージでダグラスさんに恥をかかせるわけには……)

〇〇「私、やります……!」

ダグラス「〇〇!」

私はじっとダグラスさんの目を見つめた。

ダグラス「……約束する。……危険な目に遭わせるようなことは絶対にしない」

ナイフ投げのピエロ「では……勇敢なプリンセスはこちらへ」

〇〇「……」

的の傍に立ち、ナイフを構える彼と見つめ合う……

ナイフ投げのピエロ「さあ、それではどうぞ!!」

緊張に息を呑む劇場にドラムロールの音が鳴り響いた。

ダグラス「……」

目の前でダグラスさんの瞳が鋭く輝いた時…-。

〇〇「っ!!」

彼が投げた数本のナイフが閃光となり……

私のすぐ傍にあった的に、寸分の狂いもなく刺さった。

ナイフ投げのピエロ「大成功でございます!!」

その瞬間、割れんばかりの拍手がステージに向けられた…-。

その後……

ショーが終わった私達は劇場を後にした。

(まだ、心臓がドキドキしてる……)

ダグラス「まさか〇〇と一緒にあんなショーをやることになるとは……。 ……怖かっただろう」

〇〇「あ……っ」

そっと逞しい腕に抱かれて、私は再びステージの上での緊張を思い出した。

(この手があのナイフを投げて……)

太陽と海の匂いが鼻をくすぐる。

すると深みのある声が私の耳元へ囁かれた。

ダグラス「君を危険な目に遭わせるかもしれないし、軽率だって思ったけど。 俺は……嬉しかったよ。君と特別なショーを楽しめて。 愛する女に信じてもらえるってのは男にとって得難い喜びだからな」

〇〇「あ、愛するって……!」

ダグラス「ハハッ、かわいい反応だ。でも本当だよ? 本当は、やめようと思った。けど、君にああまでまっすぐに信じてもらえると、ね……」

〇〇「ダグラスさん……」

ふっと笑みをこぼした後、ダグラスは私を腕から解放した。

ダグラス「……さて。 緊張でお腹もすいたし、そろそろ飯にでもしようか? 次は〇〇が落ち着ける場所にしよう」

ショーは終わったのに、私の心臓はまだうるさいくらいに鳴り響いていた…-。

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